2016 Fiscal Year Research-status Report
完全主義認知に配慮した効果的な介入法選択に関する研究
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16K17328
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 健司 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60508282)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 森田療法 / 完全主義認知 / 認知行動療法 / パネル調査 / 失敗観 / 階層的重回帰分析 / 強迫傾向 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度における研究計画は,調査研究による完全主義認知の不安増強・低減プロセスの明確化であった。これまでの先行研究の問題点として,完全主義認知と認知的対処の関連に言及した研究は一時点による調査に過ぎず,明確な因果関係には言及できないことがあげられている。また,具体的な対処方略の特定にもいまだ至っておらず,この点も課題を残す形となっている。 そこで本研究においては,完全主義認知が不安の増減に及ぼす影響関係において多面的なコーピング指標(論理的分析・破局的思考の緩和・思考抑制など)を調整変数として設定し,パネル調査を実施することで因果関係に言及することを目的とした。具体的な方法としては,一般青年200名を対象として,完全主義認知×日常ストレッサー×様々な対処の交互作用項が,ネガティブ指標(心配,反すう,抑うつなど)およびポジティブ指標(Willingness,省察など)の変化量(Time1からTime2にかけての変化量,T1からT2までの間は4週間という期間をおいた)をどう予測するか,3要因の階層的重回帰分析にて検討した。 その結果,独立変数としての完全主義認知と日常ストレッサーと失敗観が,従属変数としての反すう,省察に有意な交互作用項を示した。これは,完全主義認知を持つことだけが一元的にネガティブ指標の増強につながるとは限らず,むしろ完全主義認知を強く持ちながらも,自己の失敗を肯定的に捉えられる信念(失敗観)を強く持っていることが,ネガティブ指標の低減およびポジティブ指標の増強につながることが示唆されるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況としては,最も大きな目的である調査研究(パネル調査)が既に実施されており,データ分析も順調に進んでいる。今後は順次研究発表を行いつつも,次年度の課題にスムーズに移行できると思われることから,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画は,完全主義認知を含めた思考抑制課題による不安増幅・低減プロセスの実験的検証である。完全主義認知と認知的対処が不安思考を増減させるプロセスを明確にするため,Wegner(1994)の思考抑制課題を用いる。参加者に「日常の身近な心配思考」を1つ想起させ,その思考だけは絶対に考えてはならない(単純抑制条件),思考が浮かんでも自由にしてよい(統制条件),思考が浮かんだら自由に考えて追い出す(方略使用条件)の各3条件を設定する。実施中5分間に浮かんだ心配思考数を測定し,心配思考の増減に影響する方略を検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも安価に研究が進捗したため,次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は実験的研究を予定しているため,様々な物品が必要になる可能性がある。そのため,次年度使用額を平成29年度請求額とあわせて効果的に使用することにより,不測の事態に対応したい。
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Research Products
(5 results)