2016 Fiscal Year Research-status Report
大学生の社交不安に対するイメージを用いた認知バイアス修正プログラムの開発
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16K17341
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
泉水 紀彦 東京成徳大学, 応用心理学部, 助教 (60754463)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知バイアス / 解釈バイアス / 認知バイアス修正プログラム / 社交不安 / イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
社交不安傾向の強い人は,あいまいな社交場面に対してネガティブに解釈する傾向がある。近年,社交不安者に特徴的な認知バイアスの修正に焦点を当てた介入である認知バイアス修正(CBM:Cognitive Bias Modification)が提案されている(Koster et al., 2009)。CBMは,社交不安者の2つの認知バイアス(脅威に対する注意,あいまいな状況に対するネガティブな解釈)を対象としたトレーニングプログラムで,具体的には,結末があいまいな社交場面のシナリオを呈示し,それを比較的ポジティブに解釈する課題を行い,状況をネガティブに解釈する傾向を低減させる。欧米では多くの実証研究が行われているが(Beard et al., 2008; Murphy et al., 2007; Holmes et al., 2006; Mobini et al., 2014),日本では,解釈バイアスを対象にしたCBMトレーニングプログラムを実施したほとんど見られない。そこで本研究では,社交不安傾向が高い大学生を対象に,CBMプログラムの開発および効果検証を目的とし,同時にCBMの効果を高める方法として,シナリオを鮮明にイメージさせた上で解釈バイアスを修正するプログラムの開発を目指す。早期に大学生の社交不安に介入することにより,学校適応の向上やその後の社会不適応(社会的ひきこもり,ニート等)の低減といった予防効果が期待できる。 平成28年度は,まず文献研究を行い,CBMの先行研究を概観した。その上で,刺激文収集のため,大学生を対象に質問紙調査を行い,心理学を専攻とする大学院生6名と刺激文の整理分類を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は主に文献研究を中心にCBMの先行研究を概観した。また,大学生114名を対象に質問紙調査を行い,刺激文である,あいまいな状況,想定する結末(ネガティブ/ポジティブ)の収集を行った。その後,臨床心理学を専攻する大学院生6名と臨床心理学の専門家1名であいまいな状況,結末の整理分類を実施した。CBMプログラムの作成上,必要不可欠である刺激文の収集を行えた点は順調であると考えられる。しかしながら,平成28年度中に予定していた刺激(あいまいな状況,結末)の妥当性の検討,刺激文にマッチした画像の選定には至らなかった。平成29年度の前半には着手したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2では,研究1で収集したあいまいな社交場面のシナリオと結末からCBMの刺激として有効なシナリオと結末を選定する。方法として,大学生300名を対象に質問紙調査を行う。あいまいな社交場面シナリオ50場面と一つのシナリオにつき2個の結末(計100個)を提示し,それぞれ不安に感じる程度と,安心した感情になる程度で回答を求め,不安度と安心度の差分が大きいシナリオ50個を選定する。Fear of Negative Evaluation scale(FNE)で社交不安特性を測定し,特性が高い人が低い人と比較して,ネガティブな解釈をしやすい社交場面のシナリオを選定する。 研究3では,CBMプログラムを作成し,一般大学生30名を対象にプログラムを実施し,プログラムの問題点修正点を検討する。方法として,選定した社交場面シナリオと結末(ポジティブ/非ネガティブ)および画像を刺激として,Murphy et al(2007)を参考に,コンピュータ上で起動するCBMプログラムを作成する。CBMプログラムでは,シナリオのイメージ生成を促す教示を行った後,画像の呈示を行うのと同時にシナリオの呈示を行う。シナリオをイメージをしやすくするために,音声呈示を行う。予備実験として参加者をポジティブ解釈条件(10名),非ネガティブ解釈条件(10名),統制条件(10名)のトレーニングプログラムに割り当てる。シナリオと結末呈示後,イメージのしやすさ(5件法)を問い,実験への感想を求める。イメージがしにくいシナリオは,刺激から除外を行う。 研究2,研究3の結果は,国内学会にて発表する。また,国内外の学会に参加することで,実践に関する示唆を得る。
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Causes of Carryover |
平成28年度は,実験の刺激文の収集を実施した。刺激文とマッチした画像を呈示する必要があるため,画像の実験刺激の収集まで至らなかった。そのため,デジタルカメラ,写真素材購入しなかった。次年度使用額で,平成29年度前半に画像刺激の購入を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として,心理学実験プログラム(Inquisit 4 Web-Academic 3-Year License)購入のため350,000円,消耗品費として,画像刺激購入,質問紙のコピー用紙購入のため30,000円使用する予定である。人件費・謝金として,CBMの刺激文の音声呈示を行うため,音声録音費に10,0000円,実験参加者への謝礼に50,000円使用する予定である。旅費として, 情報収集・学会発表のため,第17回認知療法学会,第81回日本心理学会,認知・行動療法学会第43回大会にそれぞれ参加するため,150,000円使用する予定である。
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