2016 Fiscal Year Research-status Report
不眠や気分障害予防における過覚醒状態の評価方法の確立及び臨床的有用性の検討
Project/Area Number |
16K17353
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
綾部 直子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 流動研究員 (50754769)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不眠症 / 気分障害 / 過覚醒 / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
不眠症や気分障害等の背景にある生理的過覚醒を評価するHyperarousal Scale(以下、HASとする)がある。HASは自記式26項目で構成され、先行研究においては、不眠症群は健常者群と比較すると過覚醒得点が有意に高いことや、高い過覚醒状態はうつ症状やストレス、睡眠問題と関連していることが知られている。そこで本研究では、HAS日本語版を用いて評価した過覚醒状態が、不眠症や気分障害のスクリーニングツールとして有用であるかどうかについて検証することを目的としている。 初年度は、東京近郊エリアに配布した広告媒体を用いてこれまで交代勤務に従事したことのない地域住民と、精神科または睡眠外来を受診している不眠症患者を対象として、HAS日本語版や不眠の重症度、気分障害に関連する質問紙データを収集した。地域住民のうち精神疾患の既往歴がなく、かつ睡眠薬を服用していない303名、睡眠薬服用中の不眠症患者225名を解析対象とした結果、不眠症患者は地域住民と比較するとHAS得点が約10点高いことが示された。また、不眠症患者のうち不眠の重症度尺度がカットオフ未満の者においても高い過覚醒状態にあることが明らかにされた。したがって、先行研究と同様に、不眠症患者は地域住民よりも高い過覚醒状態にあること、さらに、睡眠薬服用後に不眠症状が寛解している不眠症患者においてもなお過覚醒得点が高いことから、不眠や気分障害の再発リスクを抱えている状態にある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書通り、不眠症患者を対象に質問紙調査を行い、未治療群と患者群による過覚醒状態の違いを明らかにすることができたため。地域住民に対する追跡調査については継続して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、地域住民の追跡データの結果から、ベースラインでの未発症かつ過覚醒状態の高低によって不眠症や気分障害の発症のリスクに差異が示されるかどうかの検討を行う。また、抽出された疾患ハイリスク群の過覚醒状態、不眠症状、うつ症状の経時的変化を明らかにし、HAS日本語版の評価によるスクリーニングツールとしての有用性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
生理指標データの取得に着手していないため、物品、人件費・謝金の支出が当初の予定より減り、次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、データ収集に伴う人件費・謝金、研究成果の発表に伴う国内旅費や外国旅費、英文校正費、各種消耗品に使用する予定である。
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