2016 Fiscal Year Research-status Report
学童期の注意欠如多動性障害に対する症状の自己理解促進ツールの作成と有用性の研究
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16K17357
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Children's Medical Center (Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
荻野 和雄 東京都立小児総合医療センター(臨床研究部), 児童・思春期精神科, 医員 (90762237)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 注意欠如・多動性障害 / ADHD / 学童期 / 児童 / 自己理解 / イラスト |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもの注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:以下ADHDと略す)の日常の診察では、主に親から症状や問題行動を聴取し、他覚的評価に重きを置いて診療を行っている。本人から口頭で聴取できる情報にも限りがあり、ADHD児自身の症状の捉え方は不明なことが多い。そのため本人がどの程度症状を自覚しているのかを知ることと自己理解を促進することを目的として研究を行った。まずイラストツールを作成し、実行可能性と有用性の検討をした。 イラストツールは、児童精神科医師数名とイラストレーター1名で度々意見を交換し、ADHDの診断基準の症状を基盤とした18枚のイラストと、加えて症状を簡易なことばで表し、その程度を本人が選択できる形とした。 ツールを作成をした上で、予備的研究を行った。15歳以下の23名のADHD児に症状を自己で評価させた結果、全員が脱落なく最後までツールへの回答を終わらせることができた。対象者の満足度は87%、理解度は96%といずれも高かった。これらの結果から、本ツールはADHD児が安全で楽しく実施できるツールである可能性が高いと考えられた。 また、児の親が回答したADHD-Rating Scale-Ⅳ(以下ADHD-RSと略す)の結果と比較し、彼らの自己理解の程度を推測した。回答の18項目の総点、注意欠陥9項目、多動・衝動9項目のそれぞれの平均値は、有意な乖離はなく親子の評価が同様の傾向を示した。一方、一致係数が有意に関連がなかった項目も2項目あった。また内的一貫性として分析したα係数は、全18項目は0.85、注意欠陥9項目は0.73、多動・衝動9項目は0.76と一定の信頼性を認めた。さらに施行後の本人アンケートの自由記述からは、児が本ツールを通して、より自己理解を深めている可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イラストツールの作成を行い、実行可能性を確認した。また一定の有用性も確認できた。 来年度に向けて、有用なイラストツール完成への準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
一致係数から関連を示せなかった2項目については、その理由について様々な要因があり、来年度に向け考察中である。また今年度は少人数の対象者に対しての予備的研究であり、面接の仕方にも質問者間で個人差があった。今後、本ツールの有用性をより普遍化していくため議論を重ね、本試験では面接での定型の質問も設定し、半構造化面接を行うことも計画している。
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Causes of Carryover |
イラストツール製作費への使用が次年度に持ち越しとなったことが、理由の大部分を占める。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰り越しにはなるが、上記への使用と、次年度の本試験への使用で予定通りの使用計画となる。
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Research Products
(2 results)