2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17358
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邊 言也 名古屋大学, 環境学研究科, 学振特別研究員(PD) (90637133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生理的覚醒 / 課題パフォーマンス / 扁桃体 / 線条体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が難度の高い課題に取り組む際の成功と失敗は、成功報酬だけによって決まるのではなく、様々な外的(他者の観察など)、また内的(疲労や注意の欠陥)な要因によっても大きく影響されうる。そのような影響を最小限にし目の前の課題に集中するために、我々は課題遂行に先立って心の準備をする。しかしながらこの準備期に脳がどのようなことをしているのか、その神経基盤と脳内のダイナミクスは未だ明かにされていない。本研究では課題遂行に先立つ生理的覚醒の制御に着目し、それがその後の課題パフォーマンスに如何に貢献しているのかを生理心理学的手法と脳機能計測によって明らかにするものである。 実験では生理的覚醒変化を客観的に取得するために本研究では瞳孔径の変化を取得し、その際の全脳の活動を取得するために機能的磁気画像法(fMRI)を用いて、参加者がStop Watch課題(5秒ちょうどで時計を止める課題)を行っている際のデータを取得している。 本年度は主に留学先であるRutgers大学にて生理指標である瞳孔径とfMRIの同時計測実験を行ない、22人の参加者のデータを取得して解析を行った。その結果、課題遂行前の準備期から瞳孔ダイナミクスは成功試行と失敗試行で特徴が異なること、さらにそれに一致して脳活動も感情の中枢である扁桃体と、価値表現の中枢である線条体の活動が異なることが明かとなった。 今後はさらに脳領域のネットワークに着目した検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
瞳孔径変化解析からは、成功試行と失敗試行で課題遂行直前の瞳孔のダイナミクスが異なり、成功試行では期待報酬の価値表現が抑制されていることが明かとなった。またfMRIデータの解析からは、瞳孔径計測の結果と一致して線条体尾状核における期待報酬の表現が成功試行で抑制されていることや、扁桃体における生理的覚醒の表現が成功試行で低下していることが見いだされた。 さらにFunctional connectivity解析の一種であるPsycho-Physiological Interaction解析を行った結果、成功試行では課題遂行に先立って扁桃体の活動が抑制されることで線条体の価値表現も抑制されていることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取得したfMRIデータを用いて生理的覚醒度制御と課題パフォーマンスの神経基盤をEffective connectivity解析を用いて検証する。より具体的にはSPMに実装されているDynamic Causal Modelingの手法を用いて、人間が如何に状況に応じて生理的覚醒度変化を制御しているのかを解明する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では平成28年度に眼球計測装置を買う予定であったが、交付額が大幅に減額されたことと、申請者のアメリカへの留学が決定したために、装置の購入を断念した。その分の経費は、ストレス指標を取得するための唾液サンプルキットや脳内ネットワーク解析用のコンピュータの購入費に充てる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
fMRI実験の参加者への謝金、ストレス指標を取得する際の唾液サンプルキット、脳内ネットワーク解析用のコンピュータ、学会への参加発表経費、日本の協力研究者とのミーティングのための旅費など。
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Research Products
(3 results)