2016 Fiscal Year Research-status Report
感覚と運動の同期における刺激の空間的情報および社会的文脈の影響とその神経基盤
Project/Area Number |
16K17359
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小野 健太郎 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 研究員 (30435870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 聴覚 / 同期 / tDCS / タッピング / 運動知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、聴覚における音の運動知覚とタッピングによる同期に関わる神経基盤についての研究を行った。はじめに予備実験として、聴覚刺激に対する運動情報の付加によって同期タッピングの精度がどのような影響を受けるかを、刺激の周波数や提示する速度などの刺激パラメータを数種類用意して行動実験を行った。この実験からは、運動情報の付加により同期タッピングの精度は低下することがわかり、特定の周波数や提示速度に依存した影響は見られなかった。 この予備実験の結果を踏まえて、聴覚刺激への運動情報付加による同期タッピングに関与する脳部位を特定するために、径頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いながら同期タッピングを行わせる実験を行った。その結果、下頭頂葉小葉へのtDCSを行うことで運動情報を付加した聴覚刺激との同期タッピングの精度が有意に向上することがわかり、この部位が聴覚における運動情報処理と、自分の運動(タッピング)と聴覚刺激とのタイミングの同期に関わることを明らかにすることができた。この結果は論文としてまとめ、European Journal of Neuroscience (Ono et al, 2016) に採択された。また、次年度の計画として運動情報付加が視覚刺激との同期タッピングに与える影響を調べることを予定しているが、聴覚刺激との同期タッピングに対する影響との比較を行うことを目的として、両感覚モダリティにおける運動情報付加の影響を同一被験者で比較する行動実験を行った。これは来年度の計画に対する予備実験という位置づけでもあり、この実験で得られた結果をもとに平成29年度の視覚刺激を用いた実験デザインの検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究に関しては、当初予定していた実験を進めただけでなく論文を発表することができた。また、次年度の準備も含めた実験をもうひとつ行うことができたことから、概ね順調に進展しているとかんがえられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は視覚における運動情報の付加が同期タッピングに与える影響と、その際の社会的促進効果についての研究を進める予定である。しかし、本計画の遂行者が計画段階で所属していた大学から他大学へ異動になったため、当初予定していた脳磁図を用いた実験は困難になる可能性が考えられる。そこで、脳磁図とほぼ同じ仕組みで脳活動を測定する脳波計を用いた実験へと変更することを予定している。また、計画段階で所属していた大学での同僚を研究協力者としているので、そちらとの積極的な連携により可能な限り計画の変更を抑えるようにしていく。
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Causes of Carryover |
平成28年度においては、聴覚実験の環境構築のために計画していた予算が足りなかったので、前倒し請求を行った。しかし、学会への出張などを研究協力者から支払ってもらうことが何度かあったので、その分が剰余となり次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に予定している学会出張や研究打ち合わせの回数を増やすことと、視覚実験の実験環境構築に使用する予定である。
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