2017 Fiscal Year Research-status Report
感覚と運動の同期における刺激の空間的情報および社会的文脈の影響とその神経基盤
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16K17359
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小野 健太郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 研究員 (30435870)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 聴覚 / 視覚 / 同期 / タッピング / 運動知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、同期タッピング課題において運動情報を付加することの影響が聴覚と視覚でどのような違いを生じるかについての行動実験を行った。視覚刺激を用いた同期タッピング課題における運動情報付加の影響について、前年度に行った予備実験の結果を解析したところ、視覚では運動情報を加えることで同期タッピングの精度が向上することを示唆する結果が得られた。これは前年度に報告した聴覚における運動情報付加の影響とは反対の結果である。そこで、二つの実験で見られた異なる結果を同一被験者内で比較することを目的として、行動実験を行った。刺激の提示頻度や速度を複数設定して、同期タッピングにおける運動情報付加の影響を聴覚と視覚のモダリティで検討したところ、聴覚では以前と同様に運動情報付加によって同期タッピングの精度が低下した一方、視覚では運動情報付加によって同期タッピングの精度は向上することが示された。これは、感覚と運動の同期に関わる心理メカニズムが感覚モダリティによって異なることを示唆する。また、聴覚系と視覚系における構造的な違いから空間情報の処理は視覚優位であることが知られているが、実験結果はこの違いを反映したものと考えられる。この実験結果は論文としてまとめ、Neuroscience letters(Ono et al, 2018)に採択された。また、この結果を反映する脳活動を検討することを目的として脳波を用いた実験を計画しており、その実験デザインの検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に関しては、当初は脳磁図を用いた研究を計画していたが、異動による所属先の変更により脳磁図を使えない状況となった。そこで当初予定していなかった行動実験を行ったが、感覚モダリティによって運動情報付加の影響が異なることを発見することができ、論文を発表することもできた。よって多少の計画変更はあったものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、視覚での同期タッピング課題における運動情報付加の効果に対して社会的促進が見られるかを検討する計画である。当初の計画では指揮者の指揮動作を刺激として用いる予定であったが、異動による所属先の変更により指揮者の協力を得るのが困難となった。そこで音楽経験の影響を検討することは止め、指揮動作よりも単純で誰でも可能な動作を刺激とした実験を行うことで、より普遍的に見られるであろう社会的促進の影響について検討を行う。
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Causes of Carryover |
異動による所属先変更によって当初計画していた実験が行えず、そのために主に実験参加者への謝金に予定していたものが消費できなかったため。
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