2016 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュを対象とした行動の再出現における嫌悪刺激の抑制効果
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16K17366
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Research Institution | Aichi Bunkyo University |
Principal Investigator |
黒田 敏数 愛知文教大学, 人文学部, 講師 (80712968)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / オペラント条件づけ / Relapse / Renewal / Resurgence / 嫌悪刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)は、遺伝学・神経科学で近年頻繁に用いられている動物モデルである。数年前に全ての遺伝子が明らかになっており、遺伝子操作が施されたタイプが数多く存在する。その一方で、ゼブラフィッシュの行動に関する研究は少ない。行動についてのデータを集めることで、遺伝子と行動の関係が明らかになることが今後期待される。本研究ではゼブラフィッシュを対象に、「消去された行動の再出現における嫌悪刺激の抑制効果」の検証を行う。 消去された行動の再出現(Relapse)は、再出現を起こす方法により幾つかの種類に分けられるが、いずれも3つのフェーズに分けて行う。1つ目の種類(Renewal)の特徴は、各フェーズで文脈となる刺激(文脈刺激)が異なる点である。フェーズ1では、文脈刺激Aの下で、ターゲットとなる反応をオペラント条件づけで学習させる。フェーズ2では、別の文脈(文脈刺激B)の下でターゲット反応を消去する。フェーズ3で被験体を元の文脈(文脈刺激A)に戻すと、ターゲット反応が再出現する。 2つ目の種類(Resurgence)の特徴は、各フェーズで学習させる反応が異なる点である。フェーズ1では、ターゲット反応を学習させる。フェーズ2では、ターゲット反応を消去しながら、別の反応(代替反応)を学習させる。フェーズ3で代替反応を消去させる際、ターゲット反応が再出現する。 ゼブラフィッシュへの嫌悪刺激には、天敵であるインディアン・リーフフィッシュ(Nandus Nandus)の動画を用いる。嫌悪刺激にはターゲット反応を減少させる効果があるが、消去された行動の再出現に対する効果の研究はこれまでほとんどない。 2016年度は、ゼブラフィッシュでRenewalとResurgenceが起こるかの検証を実験的に行うことを計画していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、ゼブラフィッシュでRenewalとResurgenceが起こるかの検証を行った。Renewal・Resurgenceそれぞれの手続きが確立されている一方で、それをどのようにしてゼブラフィッシュに適用するかの研究は皆無である。そのため、実験装置を徐々に改善しながら、RenewalとResurgenceを起こすのに最適な方法を探った。その結果、RenewalとResurgenceそれぞれを再現できる方法を確立できた。 また、当初予定していなかった、3つ目の種類の再出現(Reinstatement)の検証もゼブラフィッシュで行った。Reinstatementでは、フェーズ1でターゲット反応を獲得させた後、フェーズ2でその反応を消去させる。Reinstatementの特徴はフェーズ3であり、フェーズ1においてオペラント条件づけに用いた刺激(強化子)と同じものを、フェーズ3でランダムで呈示する。これをきっかけに、ターゲット反応が再出現する。上記のRenewalやResurgenceの実験と同様に、実験装置を徐々に改善しながら、Reinstatementを再現できる方法を確立した。3種類の再出現のデータをまとめた論文を、現在執筆中である。 消去された行動の再出現の研究とは別に、実験を円滑に進めるためのシステムの構築にも取り組んだ。具体的には、各実験装置をインターネット経由で遠隔操作するためのシステムである。実験遂行に関わる負担を軽減するだけでなく、安価でシステムを構築できるため、特に若手研究者への普及が期待される。論文は投稿済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ゼブラフィッシュの天敵であるインディアン・リーフフィッシュの動画に、嫌悪刺激としての機能があるかどうかの検証を行っている。嫌悪刺激と呼ぶには、ターゲット反応直後の刺激呈示で、その反応を減少させることが条件である。ただし、単に反応が減少するだけでは不十分である。ターゲット反応とは無関係に刺激を呈示した場合や、ターゲット反応以外の反応(代替反応)への影響と比較する必要がある。また、ターゲット反応の抑制効果は一時的なものではないこと(つまり、嫌悪刺激に慣れないこと)が望ましい。これらの条件を満たす動画を現在作成中である。 2017年度の後半は、Renewalのフェーズ1あるいはフェーズ2で嫌悪刺激を呈示し、フェーズ3におけるターゲット反応の再出現が抑制されるかの検証を予定している。
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Causes of Carryover |
少額(1,311円)で購入できるものがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の物品費にあてる。
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