2017 Fiscal Year Research-status Report
シティズンシップ教育の排除性の生成構造の解明―米国教育史を事例として―
Project/Area Number |
16K17372
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斉藤 仁一朗 東海大学, 課程資格教育センター, 助教 (80756031)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 社会科教育史 / 米国 / シティズンシップ / カリキュラム / 評価 / 教師 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究期間の2年目であった。そのため、昨年度に引き続き、史料収集を行いつつ、研究成果を発信していくことになった。 主な研究成果としては、2点挙げられる。 1点目は、米国の20世紀前半における社会科教育に関する評価史に関して、成果発表を行ったことである。この成果は2017年10月の日本教育方法学会第53回研究大会において、「20世紀前半の米国社会科教育における情意面の評価方法」と題する発表を行った。この研究においては、20世紀前半の中で、客観的にわかる事実的な知識の評価をしていた段階から、生徒の態度面に及ぶ評価をする段階へと変化していく転換点に焦点を当て、それらの変化がなぜ起こったのかについて考察を行っている。それらの分析を通して、米国社会科成立当時の理念が当時の社会科教育関係者にどのように捉えられ、評価の議論へと関連付けられていったのかについてを明らかにした。 2点目は、ハロルドラッグのカリキュラム論に関して、論文掲載されたことにある。この成果に関しては、雑誌『文明』(東海大学文明研究所)において「カリキュラム研究史に見る「近代性」に関する一考察――20世紀前半の米国社会科教育史に焦点を当てて――」と題した論文となった。この研究では、1916年に全米教育協会から出された『中等教育における社会科』のカリキュラム観と、ハロルドラッグのカリキュラム観を対比する形で考察を進めた。その際に、先行研究ではカリキュラムの理論、教材などを開発して点で高評価されてきたハロルド・ラッグのカリキュラム論において、個々の教師(実践者)がどのように捉えられていたのかという点に考察を行っている。これらの分析を通して、ラッグが教材と教師、理論家と実践家の協力・相互補完関係を意識していた点を論じることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主な理由は、当初に予定していた米国への史料収集の調査を実現できなかった点にある。渡米調査が実現でき中った理由としては、現地調査と合わせて予定していた学会発表に査読で不採択になってしまった点、今年度に携わることになった他の研究や業務等々とのバランス・調整がうまくできなかった点、(今年度に限り)国内からでも行える文献取寄せの見通しがある程度ついた点などが挙げられる。 次年度は今年度の蓄積や課題を生かした研究計画を遂行していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、主に3点を挙げることができる。 1点目は、昨年度に成果発表した評価史研究の論文化である。この点に関しては、今年度中に投稿・査読対応を順次進めて行く予定である。 2点目は、米国の現地にて、追加の現地調査を行うことである。これに関しては、現段階では、米国ワシントンDCとバージニア州を候補地としており、調整中である。 3点目は、まだ成果報告できていないカリキュラム論に関する分析と成果発表である。既に史料収集を終えて、分析中の内容もあるため、これらは発表・投稿に進めて行く。なお、海外発表が一件、現在査読中である。 2018年度は、研究三ヶ年の最後の年にあたる。そのため、前の二年間よりも成果報告に比重を置き、積極的に研究発信を行っていきたい。
|
Causes of Carryover |
今年度、米国での現地調査が行うことができなかったため、次年度にそれに該当する資金の一部を繰り越すことにした。そのため、繰り越した研究費の用途に関しては、次年度の現地調査の費用に回すことを想定している。
|