2016 Fiscal Year Research-status Report
日本における「教師教育者」観と教師教育者が教育の倫理に果たす役割に関する研究
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16K17381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山辺 恵理子 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特任研究員 (60612322)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教師教育 / 教育の倫理 / 国際比較 / オランダ / ヒアリング / 文献レビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の教師教育の議論の中で長く抜け落ちてきた「教師教育者(teacher educator)」の専門性に関する研究の中でも、さらに語られることが少ない「教育の倫理」に関する教師教育者の役割について取り上げて、国際的な議論と国内の議論との比較研究を行う本研究プロジェクトの初年度に当たる平成28年度は、海外での基礎的な情報収集と文献研究を中心に手がけた。 まず、ヨーロッパ教師教育学会(Association for Teacher Education in Europe; 略称ATEE)に参加した。「教師教育者の専門性開発」と「社会正義」に関する分科会から、教師教育者の役割や活動に含まれる社会正義や倫理に関する洞察力を要する諸問題について、欧州で展開されている議論の情報を収集した。 さらに、教師教育も手がけるオランダの現職の高校教諭へのヒアリングを実施した。Ashram Collegeに勤務するWilly Wijnandsは、生徒自身が学習プロセスを可視化し、マネージメントできるようになることを支えるeduScrumと呼ばれる独自の教育アプローチを開発した人物であり、ポルトガルやスペイン、ドイツ、スイス、ブラジル、アメリカなどの国々において、eduScrumの運用を通して教師ー生徒関係を組み替えることのできる教師の育成を目指した教員研修を実施している。教師による画一的な教授の暴力性を訴え、生徒の主体性を発揮しやすい授業づくりを提唱するWijnandsの活動は、教育の倫理性を意識した学校ベースの教師教育者の成長プロセスの事例として重要であると言える。 最後に、教師の専門性発達や倫理に関する国内外の文献を収集し、先行研究レビューを執筆する準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務校が翌年度から変わることが年度途中に決定した関係で、業務の引き継ぎや研究室の引っ越しなどが重なり、予定通りに研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は特に①ヒアリングの実施および②学会発表などを通した研究成果の発表に遅れが出たことを受けて、今後は①ヒアリングへの協力を求める国内外の教師教育者のリストおよびヒアリングの実施方法を改めて見直しながら進めるとともに、②先行研究レビューを何かしらの形で発表することを重視しながら研究を遂行する。また、これまでは主に欧州の教師教育者概念に関する文献や資料を収集してきたため、今後は米国の文献・資料の収集に重きを置く。
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Causes of Carryover |
平成29年度から本務校が変わることが年度途中に決定したことを受けて、業務の引き継ぎなど予期していなかった仕事が発生したため、国内外の教師教育者へのヒアリングを十分に実施することができなかった。このための旅費・謝金として用意していた予算が余ってしまったのが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施する予定だった国内外の教師教育者へのヒアリングを、平成29年度に実施する。ただし、時間の制約を考慮して、ヒアリング対象者の数については見直しを行うとともに、グループインタビューなどの形式も検討する。
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Research Products
(3 results)