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2017 Fiscal Year Research-status Report

近代日本の教職キャリア形成の変遷に関する研究

Research Project

Project/Area Number 16K17386
Research InstitutionShizuoka University

Principal Investigator

松尾 由希子  静岡大学, 教職センター, 准教授 (30580732)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsキャリア形成 / 日本教育史 / 近代教育史 / 教師教育 / 教員の資質
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、明治期の教員を対象に、教員にふさわしい資質を身につけていくキャリア形成の実態及び明治期を通じた教員キャリア形成の変遷の解明にある。史料として、主に「履歴史料」(任免に関わる史料。長崎歴史文化博物館所蔵。)を用い、事例として、明治期を通じて教員の履歴史料が存在する長崎県をとりあげる。
平成29年度は、「学制」期(明治5年~同11年)における長崎県の教員の辞職願を用いて、当該期における教職観の検討を通じて、教員のキャリア形成の実態解明につとめた。その成果は、全国地方教育史学会大会で発表し、論文にまとめた。
結果、テーマに関して以下の2点があきらかになった。1、教職は専門職としてとらえられていたという点である。先行研究において、少ない給料等劣悪な待遇を理由とする教員の辞職が指摘されてきたが、教員の辞職願の内容より、教職に就いたことで、教授法等の未熟さを自覚し、師範学校等で修業したいと考える人が一定数存在した。2、教員の任用前と任用後にみる教員に必要とされる資質に対する「ずれ」である。教員としての学習不足を理由に辞職した教員の履歴史料を分析した結果、任用時における彼らの履歴は「学制」期の教員として申し分のない履歴であった。つまり、教職に就く前は通用すると想定した資質が、実際に教壇に立った時にうまく機能せず学習が不足していると感じる教員もいた。
このように、「学制」期の教員の中には教員としての未熟さを自覚し、師範学校等への進学を辞職理由にあげる教員が一定数存在した。まだ調査途中であるが、進学及び修業を理由で辞職した人が、進学や修業後に再び教員として任用される例は珍しくない。本研究の事例より、これまで先行研究でいわれてきた待遇劣悪による辞職という以外に、教職の専門性を高めるためのキャリア選択という意味での辞職もあったことが判明した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

平成29年度は、「2期:教員免許状に有効期限を設けた時期(明治13年~明治32年頃)」という研究課題に基づき、明治中期の教員のキャリア形成について検討する予定だったが、昨年度遂行予定であった「1期:『学制』発布~府県による師範学校設立期(明治5年~明治12年頃)」について研究を中心に進めた。長崎県には推定した以上に膨大な資料が残存しており、平成28年度に、当初予定になかった明治期全体を通じた教員のキャリア形成に関わる状況について把握する作業を行なう必要があった。そのため、平成28年度の計画(1期の研究遂行)が本年度にずれこむことになった。本年度は1期について学会で発表し、論文にして投稿するという手順をふんだため、同時に2つの時期の研究の遂行が困難になった。さらに、本年度は申請時には判明していなかった教員免許法改正に伴う教職課程の再課程認定の業務が加わり、学内業務のエフォートが高くなったことで、2つの時期を1年で同時に研究することが難しくなった。
以上の理由で、当初の予定通りに研究が進んだとはいえないが、当初予定していた2期の史料調査についてはおおむね終わっているため、次年度に史料について分析し、成果を発表する予定である。

Strategy for Future Research Activity

【平成29年度に予定していた研究課題の遂行】
平成30年度は「2期:教員免許状に有効期限を設けた時期(明治13年~明治32年頃)」を対象に、研究を遂行する。平成28年度の研究成果(明治期を通じた状況の把握)より、教員の教職キャリア形成に関しておおまかであるが把握している。本年度に引き続き史料収集及び分析を行なう。
【平成30年度の研究課題の遂行】
「3期:教員免許状の有効期限を廃止した時期(明治33年以降)」を対象に、研究を遂行する。平成28年度の明治期を通じたおおまかな史料調査及び分析により、当該期について一部の分析は終えているため、さらに史料収集及び文献調査を行ない、分析を進める。

Causes of Carryover

(理由)平成29年度は【現在までの進捗状況】で述べたように、予定していなかった学内の業務負担増により、本研究におけるエフォートが低くなった。そのため、予定していた雇用や史料調査に変更が生じ、研究費を繰り越した。繰り越した研究費については、次年度において主に史料調査及び文献調査に関わる旅費や分析の際に必要となる雇用として使用する予定である。

(使用計画)【史料調査】平成30年度の研究課題遂行のために、史料が所蔵されている長崎歴史文化博物館を中心に、15日程度の調査を行なう。また、史料の地域的特性を客観視するために、同時期の「履歴史料」を所蔵する文書館(埼玉県立文書館等)でも史料を閲覧する。平成29年度は、【現在までの進捗状況】で述べた理由により、予定していた雇用や史料調査等に変更が生じたため、研究費を繰り越した。繰り越した研究費については、次年度において主に史料調査に関わる旅費や分析をする際に必要となる雇用として使用予定である。【研究成果の発表及び準備】研究成果の発表のために、学会等に参加する。また、論文執筆にあたり研究課題に関する書籍購入や論文(複写、依頼)を必要とする。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 「学制」期の小学校教員の辞職にみる教職観―長崎県教員の履歴史料の分析―2018

    • Author(s)
      松尾 由希子
    • Organizer
      全国地方教育史学会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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