2017 Fiscal Year Research-status Report
協同学習を用いた授業における教師の省察支援ツールの開発と実証
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16K17391
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤井 佑介 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20710833)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 省察 / 対話的自己 / 授業アーカイブシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は協同学習を行った教師の省察を支援するツールの開発と実証である。そのため、本年度は特に省察のあり方に着目し、以下の2点に関する研究を行った。 まず、協同学習を行った教師の省察を自己形成を把握するために、ハーマンスの対話的自己論を援用し、熟練教師の語りの分析を行った。ポジションの支配性の強弱と葛藤に焦点を当てて、逐語記録の分析を行った結果、複数のIポジションとポジション同士の対話関係が明らかになった。その結果、①A教諭による授業省察は、7つのポジションの対話によって展開しているということ、②A教諭の授業省察における思考プロセスは7つのポジションが支配性を流動的に強めることで展開されているということ、 ③「授業者としての私」以外のポジション同士も対話関係を形成しているという知見が得られた。これらの知見より、授業省察のプロセスの中で、A教諭に内在する7つのポジションがそれぞれの支配性を流動的に強めて対話を行うことで、授業に関わる様々な捉えを深化させ、授業者の実践の根幹を探ることを実現しているということが示唆された。 次に、授業アーカイブシステムを活用した省察と授業分析に関する研究を行った。教育実習を終えた教育学部生100名を対象として、グループで自身らの実践を省察及び分析し、議論することが有効であるかを主観評価の質問紙調査として実施した。その結果、授業アーカイブシステムを活用した省察は授業の再構成、他者の授業の分析は、新たな視点の獲得といった点において有効であることがわかった。ただし、授業アーカイブシステムはサーバー等のインフラの整備として課題があることも明らかとなった。 これらの研究は協同学習を行った教師がどのような観点で省察をするか、また、授業アーカイブシステムの構築がそのツールになり得るという点で、示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熟練教師の省察のあり方や授業アーカイブシステムが教師の省察を促すことに寄与しうるということは、本年度の研究で明らかになった。それらは、学術論文として社会へ公表することもできた。 ただし、予定していた初任教師と熟練教師の協同学習における視点の移動に関するデータの収集ができなかった。原因としては収集予定であった対象学校との日程調整が難航したことが挙げられる。 よって、計画よりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずは、対象学校と早期に日程の調整を行い、予定していた初任教師と熟練教師の協同学習時の視点の移動のデータを収集する。さらにそれを分析することで、教師が協同学習場面でどの程度、教室の状況を把握しているか、または、意思決定を行っているのかを明らかにするとともに、省察に必要な要素を明確化していく。それらを踏まえて、協同学習を行った教師の省察を促すツールを再構成していく。
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Research Products
(2 results)