2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Establishment and Development of the Boy Scout movement during the period of the Republic of China
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16K17399
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
孫 佳茹 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, その他(招聘研究員) (40757316)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 童子軍 / ボーイスカウト / 中華民国 / 児童団体 / 社会教育 / 青少年教育史 / 児童史 / 銃後活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究目的は、南京国民政府期における童子軍の国際性のあり方を明確にすることである。 研究実施に当たって、(1)南京国民政府期における童子軍の訓練基準の変遷(2)南京国民政府期に発行された主要な童子軍教科書の内容分析を通じて、国際性のあり方を考察した。 研究内容は主に2つある。 (1)1926以後、国民党政権は党義を加える形で童子軍の訓練課程を改訂した。運動の目的がより民族性を主張するようになった。一方で、童子軍の指導方針となる政策作りには、北京政府期の童子軍関係者の参加により、政治色の内容も軍事訓練項目も減らされている。更には中国童子軍総章に「児童中心主義」を意識させるような文言さえ含まれるようになった。つまり、南京国民政府期においては、三民主義が注入され「党化」教育が進められたが、北京政府期童子軍関係者の関与により、逆説的ではあるが、童子軍運動の本来の方針がある程度守られることになったのである。(2)1934年以後は童子軍科目の必修化により、学校における童子軍の比重がますます大きくなった。一方、北京政府期童子軍運動の代表的な人物の一人である範暁六によって編纂された数種類のテキストを分析した結果、全面戦争の局面を迎える際のみ、テキストには国家意識を強めるような時局の内容を取り入れられるようになっていった。このことについて、範は後日の回想の中で、戦時対応のためのものだと語っている。少なくとも、北京政府期の童子軍関係者は、南京国民政府期に入っても非戦時においては、童子軍を軍事組織として考えようとはしていなかったことは明確である。 このように南京国民政府期に国民党の統轄下で行われた童子軍運動は、国際性より民族性が強調されていたが、そのような変質は、第2次世界大戦の終結に伴い、童子軍関係者から強い反発を受け、再び国際性の重要性が再認識されていくことになる。
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