2017 Fiscal Year Research-status Report
大正新教育におけるカリキュラム改革の史的再検討―成城小学校を中心に―
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16K17400
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
足立 淳 朝日大学, その他部局等, 准教授 (50707528)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大正新教育 / 成城小学校 / カリキュラム改革 / 自学主義 / 郷土教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
採択された研究計画に基づき、前年度に調査・収集した海外文献と成城学園所蔵史料の分析を進め、個別学習と集団的創造的活動とを柱とするウィネトカ・プランのカリキュラム構造が、成城小学校の教師たちのカリキュラム観に与えた影響について検証を進めた。 その結果、同校におけるウィネトカ・プラン研究の中心人物と目される小林茂は、赴任以前から米国の教育改革の動向に関心を持ちつつ教育研究を進めてきた教育者であり、カリキュラム改革の趨勢は「社会化 」「生命化」「個別化」の三つだとの問題意識を持っていた。そして、こうした問題意識に即して成城小における教育改革に取り組んでいったことが確かめられた。 また、小林は地理の研究主任に就くと、上記の問題意識に即した地理教育のカリキュラム改革を実現するための鍵概念として当時の日本の教育界において台頭してきた「郷土」に着目し、成城小で従来から掲げられてきた「自学主義」を批判的に展開していこうとしていたことも明らかになった。 なお、研究計画には示さなかった作業ではあるが、2017年度は、上記の作業と並行して、同時代の一般的な公立小学校における教育内容と大正新教育におけるカリキュラム改革の内容との比較考証のために、1930年代初頭の新潟県中蒲原郡の公立小学校の児童文集についての分析にも取り組んだ。その結果、満州事変後の公立小学校において、多くの教師が、児童に対して、国内外の情勢に関する科学的・実証的な認識を育むのではなく、情緒的・徳育的な指導を推進していたことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前任校の任期満了に伴う勤務校の異動と業務内容・エフォートの変化により、当該年度の進捗状況は当初想定していたよりもやや遅れている。ただし、刊行・発表された研究業績は少ないものの、調査・収集した資史料の分析は継続的に進めており、2018年度中の発表に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、採択された研究計画に沿って作業を進める。やや具体的には、成城小学校の教師である小林茂と内田庄次の共著『郷土教育と国史地理の取扱』をはじめとする諸論考に示されたカリキュラム観を、前年度に収集した一次史料の分析を通じて解明された同時代の郷土教育連盟の動向やその指導者の一人であった小田内通敏の理論との関連性を考慮しつつ分析する。 また、設立初期から取り組まれてきた学校劇の教育的意義づけが、成城小内部で従来見出されてきた芸術教育としての意義から、1930年代に入ると協同的活動としてのそれへと推移し、再評価がなされていったことを、同校の学校案内や教師たちの著作や論考、成城学園に所蔵されている当時の職員会議の記録などから総合的に考察する。
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Causes of Carryover |
研究計画の進捗状況について先述した通り、当該年度は勤務校の異動に伴う研究環境および業務内容・エフォートの変化が生じたため、当初に想定していた通りに調査や分析が進められなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。そこで、2018年度は、全年度に遂行できなかった成城学園での資史料の調査・収集に取り組むとともに、研究成果の発表を行なう予定である。
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