2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnography of English language education in school as communicative events
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16K17415
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榎本 剛士 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (30582192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エスノグラフィー / コミュニケーション論 / 学校英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度に石川県金沢市の中学校に週一回の頻度で通って収集したデータの整理を続けながら、「ことば」としての英語、および「教科」としての英語(の授業)に対する生徒の「メタ語用的意識」に関する仮分析を進めつつ、そこから、公教育における英語教育の目的論の再構築に資する視座の模索へ研究を展開させた。 まず、生徒の「メタ語用的意識」について、生徒たちの多くが、「ことば」としての英語の必要性に関する認識を持ちながらも、それを学校で学ぶ際には、良い成績を修める、授業や課題に頑張って取り組む、チャレンジする、苦手を克服する、力をつけていく、といった枠組みの中で自分たちの行為の意味を解釈している、という傾向が見えつつある。加えて、授業において、教師の英語を全員でリピートする、ペアで練習する、個人で練習する、それぞれの活動で生徒の声のトーンが異なることも、「メタ語用的意識」の違いを指し示しているものと思われる。 研究期間全体を通じて、記述式アンケート等で明らかになる類の「メタ語用的意識」と、教室における談話が指し示すそれとの間の体系的な繋がりとズレに留意しながら、「学校」という制度的な場において英語がどのように対象化され、経験されているかを解明する、という視座に基づく研究方法の確立に向けて、足場ができつつある。今後、第二言語習得論との接合も視野に入れながら、さらに詳細な分析を進めていくことで、視座・研究方法の両者をより確固で援用可能なものにしていく。 さらに、上記のような分析が、公教育における英語教育の目的論に関する新たな視座の模索に繋がったことは、予定外の収穫である。教室における「意見交換」の意義が生徒たちによって指摘されることがしばしばあり、このことは、「異文化理解」など従来から設定されてきた価値に加え、「公共性」といった価値を英語教育の目的に据える可能性を示唆している。
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Research Products
(3 results)