2019 Fiscal Year Research-status Report
職域横断型資格の政策過程 ―心理職の認証を巡る日米比較研究―
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16K17416
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸山 和昭 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20582886)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 専門職 / 職域横断 / 政策過程 / 心理職 / 日米比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画の4年目にあたる令和年度は、日本の心理職の状況について、特に心理職の研修制度の歴史的な変遷に焦点をあて、臨床心理士資格の制定から公認心理師資格のカリキュラム制定いたるまでの議論を分析した成果について、専門職の研修制度に関する書籍の一章分として取りまとめ、公刊した。 また米国における心理職養成において、複数のアクレディテーション団体が並立する状況が生まれた歴史的な背景についてまとめた成果を、日本教育社会学会の大会にて発表した。知見の要約は以下の通りである。米国の心理職において、複数のアクレディテーションの仕組みが並立することになった背景には、アメリカ心理学協会(APA)と、そこから1980年代後半に独立した科学的心理学協会(APS)の歴史がある。APA(1892年設立)は当初、アカデミックな研究者の組織として発足したが、第二次世界大戦後、次第に臨床家を中心とした心理職の専門職集団としての性格を強めていく。しかし、APA内部において臨床家が支配的になるにつれて、大学における一部の研究者の集団は不満を強め、APSとして独立することになった。さらに、PCSASの母体となったのは、APSのなかでも臨床領域での科学的心理学を追求する集団であったAPCSである。APCSは、科学的心理学を追求する臨床領域の心理学者が、APA-CoAによるアクレディテーションを拒否した場合、各州での臨床領域での免許システムから排除されること等の不都合を理由として、独自のアクレディテーションの創設を模索していた。その結果として、APSの支援も受けながら発足したのが、PCSASであった。実際、PCSASは、2014年にはデラウェア州、イリノイ州における心理職の資格認定の要件として、APA-CoAと同等の扱いを受けるなど、認証機関としてのプレゼンスを高めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度については、国内での研究成果の発表が中心となり、また年度末の新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、当初に予定していた海外調査を実施することができなかった。令和元年度に実施予定であった海外調査については、新型コロナウィルス問題の終息如何に左右されるところではあるが、可能であれば令和2年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、米国における心理職資格に関する政策過程と認証制度運用の実際について集中的に調査を進め、研究の総合的な成果を発表する。
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Causes of Carryover |
令和元年度については、国内での研究成果の発表が中心となり、また年度末の新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、当初に予定していた海外調査を実施することができなかった。そのため、令和元年度に実施予定であった海外調査の費用が、次年度使用額として発生した。同費用については、新型コロナウィルス問題の終息如何に左右されるところではあるが、可能であれば令和2年度の海外調査にて使用の予定である。また、令和2年度についても海外出張による調査が難しい場合には、海外調査については文献調査及びオンラインでの調査に切り替える。この場合には、文献の入手のための費用、資料整理のための人件費、及びオンライン調査の費用に、該当予算を使用する予定である。
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