2016 Fiscal Year Research-status Report
地方都市における工業高校卒業生の学校経験と初期キャリア形成の関連
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16K17423
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
尾川 満宏 愛媛大学, 教育学部, 講師 (30723366)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学校から職業への移行 / 職業教育 / キャリア教育 / 工業高校 / 地方都市 / キャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の平成28年度は、(1)先行研究や資料などの検討を通して問題の所在を明確化すること、(2)本研究課題の基盤となった地方工業高校フィールドワーク調査および質問紙調査の再分析を通じて、本研究課題の調査に向けた仮説を抽出すること、(3)地方工業高校卒業者へのインタビュー調査を実施することの3点を中心課題として、研究をすすめた。 (1)では、今日の高校職業教育と深く関連するキャリア教育について、子ども・若者と労働や職業生活との関係再編という視点から、今日有力となりつつある「権利論的キャリア教育論」の意義と課題を検討した。検討の結果、子ども・若者のキャリア形成支援を展望するうえで「社会的・職業的な自立」をめぐる支配的言説(「自律」や「円滑な移行」を過剰に前提とする大人像)を相対化する必要性が明らかとなった(日本子ども社会学会で報告)。(2)では、工業高校卒業者の学校経験およびキャリア形成を理解するための基盤的知見を得るために、工業高校生のキャリア意識の分化について、部活動経験に着目して分析した。その結果、部活動経験による成長実感が高い生徒層において卒業後キャリアの展望が豊かであることが示唆された(愛媛大学教育学部紀要に投稿)。(3)では、以上の分析結果を基盤としつつ、地方工業高校卒業者調査に着手した。本年度は、高校での学習内容と関連が深いとみなされる職業に就いた卒業者を中心としたインタビュー調査を実施した。かれらは意外にも、工業高校で学んだ職業的な知識・スキルのレリバンスを語ることにはやや否定的であった。しかしながら、他方で、生徒指導や部活動に関する学校経験が現在の職業生活と関連していることを語る傾向にあった。こうした暫定的知見から、高校職業教育やキャリア教育の意義と機能を再検討するための視点と、今後の調査に向けた仮説が得られた(中国四国教育学会で報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、本研究課題の基盤となった地方工業高校フィールドワーク調査の再分析を行うとともに、今日の高校職業教育と深く関連しうるキャリア教育に関する歴史的・原理的考察を推進した。これらの作業により、工業高校卒業者のキャリア形成を理解するための基盤的な知見や仮説が得られた点で、計画していた初年度の研究成果を一定程度得ることができた。 地方工業高校卒業者に対するインタビュー調査の進捗状況については、当初の想定に比べてやや少数にとどまった。とはいえ、スノーボールサンプリングは順調に機能しており、平成29年度に向けた調査協力者の追加がすでに一定数見込まれているので、研究計画の遂行状況はおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、地方工業高校卒業者へのインタビュー調査を本格化しながら、論点を焦点化し、学会発表および論文発表を行っていく。現在想定されている主要な論点としては、①地方工業高校卒業者のキャリア分化パターンの把握、②工業高校における職業教育の意義と効果に関する卒業者の解釈、などがあげられる。それらについて、調査にもとづく分析と考察を学会等で報告する予定である。 加えて、平成29年度は、職業教育に関する国際学会に参加し高校職業教育の再検証に必要な視点を拡大するために情報収集を行うとともに、労働者階級少年による職業教育経験について質的研究を行っているイギリスの研究者と情報交換・共同研究打合せを行うなどして、今後の研究展開を構想する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に計画していたインタビュー調査が、調査協力者の予定変更などにより実施できなかったケースが数件あったため、調査旅費やテープ起こし業務委託費などの使用額がやや少なくなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施できなかったインタビュー調査を平成29年度に実施する。そのための調査旅費およびテープ起こし業務委託費などに、平成28年度に使用できなかった助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)