2017 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設における文化伝達に関する教育社会学的研究
Project/Area Number |
16K17431
|
Research Institution | Shiseikan Hall University |
Principal Investigator |
山口 季音 (ヤマグチキオト) 至誠館大学, ライフデザイン学部, 講師(移行) (70774230)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 児童養護施設 / 文化伝達 / 支援 / ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度における研究計画では、前年度に引き続き児童養護施設職員へのライフヒストリー・インタビューを実施するとともに、その調査結果を前年度の結果と合わせて分析し、研究成果を報告することを中心とした。 施設職員のライフヒストリー・インタビューのデータを施設内での文化伝達という視点から分析した結果、重要な要素として、①施設職員の家庭経験、②施設内におけるケアと教育の葛藤、③家庭支援による保護者とのかかわり、という3つに焦点が絞られた。 ①の職員の家庭経験とは、施設内における文化伝達は、職員自身の家庭内の経験が生かされつつ行われているというものである。この成果は、日本教育社会学会第第69回大会において報告を行った。 ②の施設内における教育とケアの葛藤については、施設職員は、子どもの「ありのまま」を認めるケアと、自立のための教育との間で葛藤を感じ、その葛藤に対処しているというものである。この結果は、中国四国教育学会第69回大会で報告し、同学会誌に論文投稿し掲載されている。 ③の家庭支援による保護者とのかかわりについては、施設に入所している子どもの保護者とのかかわりが、施設職員の家庭観を変容させ、多様な価値観を受容する実践に生かされているということである。この結果は、平成30年度日本子ども社会学会第25回大会にて報告予定である。 以上の成果は、児童養護施設における社会規範や価値観などの文化が伝達される際、職員が感じる葛藤や意識の変容を示し、施設職員の職務上の達成感や戸惑いなどを具体的に理解することに寄与するものであり、施設職員のバーンアウトなどの課題に対する対策につながることが期待できる。最終年度である平成30年度は、これらの成果を報告書としてまとめ、児童養護施設における文化伝達の全体像を示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の優先課題であったライフヒストリー・インタビューの実施と分析については、日本教育社会学会や中国四国教育学会、日本子ども社会学会(平成30年度報告予定)など複数の学会において、異なる3つの観点から報告できる成果となっており、順調に進展している。また、ライフヒストリー・インタビューにおいては、当初は量的側面を重視していたが、早い段階で調査の焦点が絞られたことから、質的側面を重視して協力者を絞り、協力者が参加している研修会にも頻繁に参加すること等によってより丹念な調査を心がげ、十分な成果をあげることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成30年度には、文献調査や補足調査としてライフヒストリー・インタビューを継続して行いつつ、前2カ年の研究成果と合わせてまとめ、児童養護施設における文化伝達の在り方を示す。補足調査に関しては、これまでの調査協力者に対する補足のインタビューや必要に応じて5名前後の職員に新たに調査を実施する予定である。なお、全体の成果は国内学会で報告し、報告書としてまとめる。 本研究を推進するうえで、前年度と同様に調査協力者数の確保および調査に伴う費用が課題となる。本調査研究における調査協力者は主に近畿圏在住であり、また、調査を精緻化するために参加している研修会も同様に近畿圏で行われている。そのため、今年度も研究代表者および学生アルバイトによって調査内容のテープ起こし作業を進め、業者への依頼を最小限にとどめ、調査のための予算を確保することに努める。
|
Research Products
(4 results)