2019 Fiscal Year Research-status Report
手書き文字の字形と学習者の主体性に関する研究-大正期から昭和初期を中心として
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16K17437
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
清水 文博 新潟大学, 人文社会科学系, 講師 (40747953)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水戸部寅松 / 間架結構 / 範書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、字形指導に尽力した人物についての調査研究を行った。特に力をいれたのが東京高等師範学校附属小学校訓導の水戸部寅松の調査である。水戸部寅松は新潟に生まれ、新潟の師範学校附属小で教育実践を行った後に東京高等師範学校附属小学校に長きにわたり勤務し、名教員として知られた人物である。調査内容をふまえ、7月には新潟大学駅南キャンパスにおいて、水戸部の教師生活全般についてのパネル展示「学術展示企画 水戸部寅松の教師生活と習字教育研究」を開催し、その周知と来場された方からの情報収集を行った。水戸部寅松は全教科の教授法研究の一環として書方研究をおこなったのであり、その研究は多岐にわたる。一つの教科、科目のみを専門に研究したのではない。そのため、この開催は書道教育関係者以外にも注目されるものとなった。展示では水戸部が教師が大書して見せることが書方成績の向上につながるとしていたことについても光をあてた。水戸部寅松の「実際的」書方指導理論では、字形を整えて書いて見せるための教員の力量形成の必要性が指摘され、児童にとっての字形の整え方の理論の整理なども行われている。このような水戸部寅松の理論のほか、他の教育者たちの字形理論についてまとめたものは、鳥取大学にて開催された第34回全国大学書写書道教育学会において発表した。ここでは主に字形指導の系譜を明らかにできたと考えている。本年度はこのほか字形指導に関わる事項として、教科書書風に影響を与えていると考えられる書道振興についての調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は字形指導そのものだけではなく、字形に関わる事項としていわゆる範書の指導等についての検討を開始することができ、研究の広がりを実感している。また人物調査の過程で情報が寄せられ、多くの史料を入手できたと考えている。研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は令和元年度までに得られた史料を活用し、書方、習字教科書の書風と学習者の主体性についての論文を執筆する。論文は史料の増加による分析をより丁寧に行い、新教育運動と絡めたものとしたい。執筆では字形が運筆によって形成されてきたことについても確かめたい。またこれまで紙幅の都合上、手書き文字規範や活字の字形の図版は必ずしも十分に論文に提示できていない。令和二年度は、これまでに検討した図版資料のうち、第四期国定国語教科書の字形変更前と変更後の図版提示を何らかの形で行いたい。
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Causes of Carryover |
本年は想定以上に史料が入手されたことと字形指導について新たな研究の着想が得られたことにより、研究についてより丁寧な検証が必要となった。そのため本年度の論文投稿は、一つ見送ることとした。この内容は次年度に投稿する予定である。この論文のために本年度計上していた分は、そのための調査執筆費用として次年度使用する予定である。
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Research Products
(3 results)