2018 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブ教育システム構築のための「自立活動」における音楽カリキュラム開発
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16K17445
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
上野 智子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (80583939)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音楽療法 / 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / 音楽教育 / 自立活動 / 他職種との連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特別支援学級の児童生徒が支援の対象者としてのみとらえられるのではなく、自身のもつ音楽性や豊かな感性を開花させ、主体的に学習活動に関わり、音楽を通して特別支援学級外の人々や事物と関わるための基盤となる「自立活動」の音楽カリキュラムを開発・検証することを目的としている。その際に音楽療法的な視点や手法を活用する。 30年度は、1)25年度から継続している中学校特別支援学校での「自立活動」における音楽療法的な視点を取り入れた活動(以下、「音楽の時間」)の実施、2)「音楽の時間」における特別支援学級担任(以下,担任)と大学教員の協働と,それによる対象生徒の変容過程について国際学会(UNICEF and Hanoi National University of Education)で発表および論文の投稿、に取り組んだ。 1)「音楽の時間」では、例年と同様に生徒の関心や学校生活に関連付けた活動を考案・実施した。また今年度は生徒たちと地元の民話をもとに創作音楽劇を考案し、文化祭で発表した。 2)国際学会の発表では、担任と協働で行った音楽療法的活動を事例とし①この活動における対象生徒の変容過程と②担任および大学教員の対象生徒に対する解釈を検討した上で、大学と地域の学校が連携して特別支援教育の実践研究をすすめることの意義と課題の解明を目的とした。その結果、①音楽療法的活動によって、対象生徒の心身の解放や自己表現の試みが生まれ、活動の有効性が確認できたこと、②その背景には、担任の特別支援教育の実践家としての専門性と大学教員が持ち込む音楽療法的視点という新しい知が掛け合わされ、総合的な知見が生み出されていたことが明らかになった。一方,今後の課題としては,客観的指標を含めたアセスメント及び授業評価の方法を探求することが挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
30年度の研究状況について、(3)「やや遅れている」と自己評価する理由として,今年度実施予定であった質問紙調査を次年度に変更したことである。そのための予算を次年度に回している。その他については,「音楽の時間」の総実施回数は例年と同様であるが,新たに地元の民話をもとにした創作音楽劇の考案と文化祭での発表というプロジェクトに取り組んだ。また「音楽の時間」の取り組みについて国際学会にて発表1件及び冊子論文1点を行い,自立活動である「音楽の時間」の構造を整理するとともに,他職種との連携の意義について論じた。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は、以下の3点の研究に取り組む。 第1に、「音楽の時間」を継続し、データベース化の作業も引き続き行う。また,昨年度から開始したプロジェクト型の取り組みも継続する予定である。第2に,ベトナムにて音楽療法的な視点を取り入れた活動の実施と研究交流を予定している。第3に,県内小中学校特別支援学級を対象にした「自立活動」の実態に関する質問紙調査の実施と分析を行う。調査結果から「音楽の時間」のような活動が,学校教育の中で果たす役割や可能性について,これまでの取り組みを加味しながら「自立活動」の音楽カリキュラムを構想したい。
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Causes of Carryover |
諸般の事情により,当初計画していた質問紙調査を実施できなかった。そのため期間延長を申請し受理されたため,次年度使用額が生じている。したがって,これらは来年度の研究計画に沿いながら,質問紙調査とそれにかかわる諸費用として使用する予定である。
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