2017 Fiscal Year Research-status Report
大学におけるピア・サポート活動がもつキャリア形成を支援する機能に関する研究
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16K17446
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
宮橋 小百合 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (80461375)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キャリア教育 / 大学教育 / 学生のピア関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、研究テーマに関する基礎的な部分の研究を、武庫川女子大学大学院の博士学位請求論文としてまとめる形で進めることができた。この論文の目的は、大学教育における学生のピア関係に基づく実践を、事例をもとにその検討を行い、そうした実践が大学教育においてもつ教育的意義を明らかにすることであった。この研究により、現在多くの大学で経験的・模索的に行われているそうした実践に、理論的な根拠に基づいてその意義を提示することができると考えた。 本研究では、まず先行研究を分析し、大衆化・ユニバーサル化が起こったアメリカの高等教育における学生のピア関係に基づく実践が制度化された経緯と、日本において1990年代以降に行われた実践を概括し、分析のための枠組みを設定した。次に、学生のピア関係に基づく実践の事例としてとり上げた大学では、初年次教育および「ピア・リーダー制度」のカリキュラムが実際にどのように意図され、実施され、達成されたのかについて検討した。そのため、カリキュラムの3つの次元、“意図したカリキュラム”、“実施したカリキュラム”、“達成したカリキュラム”に即して実践を分析した。最後に、事例としてとり上げた大学教育実践が、教授団・ピア・リーダー・1年生の3者の関係によって成立していることについて検討し、その意義について考察した。その結果をもとに、研究の目的である学生のピア関係に基づく実践が大学教育においてどのような意義をもつのかを明らかにした。 この研究で、それまで大学教育研究においても、周辺的で付随的なものとして見なされていた学生のピア関係に基づく学習とそれを促す実践に光を当て、それがユニバーサル段階にある現在の大学教育において、学生の学習活動を充実させる役割をもち、大学教育の重要な一角を占めるものであることを明らかにした。 この論文でまとめられた研究成果は、本研究の基礎となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は、上述の博士学位請求論文を提出するために多くの時間を取られてしまい、本来予定していたインタビュー調査が5分の1しか進まなかったため。 しかし、論文執筆に伴い学生のピア関係がどのような意義を持つのかについては考察できたので、そのようなカリキュラムの下で学習した経験をもつ学生たちが、卒業後にどのようなキャリアを形成し、当時の被教育経験をどのように解釈しているのかについて考えるための、研究の基礎的な部分は押さえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、まだインタビュー調査できていない研究協力者と予定を調整し、調査を続行する。2018年度中に4~5名はインタビューする予定である。 また、調査が終わり次第、記録したデータを整理し、分析を行う。 さらに、この研究の基礎部分である論文の成果をまとめて、学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に実施する予定であったインタビュー調査を当初予定の5分の1しか実施できなかったため、その調査に必要となる旅費、研究協力者への謝金、データ整理の費用を使用しきれなかったため。 2018年度には、残りの5分の4のインタビュー調査を実施し、データを分析して成果としてまとめる予定である。また、2017年度にまとめた研究の基礎的部分について、学会発表を行う予定である。
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Research Products
(4 results)