2016 Fiscal Year Research-status Report
造形活動でのこどもの学び合いにおける他者観察の役割
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16K17447
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
武田 信吾 鳥取大学, 地域学部, 講師 (10600926)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | こども / 造形活動 / 相互作用 / 学び合い / 他者観察 / 視線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
モノとの直接的な関わり合いを他者と並行的に、あるいは共同的に行う造形活動においては、他者観察の在り様は学びの質を方向付ける重要な要素であると考えられる。また、活動を共にする相手との発達段階的な差異が、他者観察の在り様に影響を与えていく事も予想される。本研究は、幼児~児童期のこどもがペアを組んで行う造形活動を対象として、視線分析を用いながら、2者間の他者観察の状況について明らかにする。 2016年度は、幼児後期のこどもと児童前期のこどもが被験者となり、異年齢ペアによる造形活動を分析対象とした。アイトラッカー「Pro Glasses 2(Tobii社)」を着用したこども2人が互いに向き合う形で着席し、土粘土1kgを主材料とした造形活動を15分間行うようにした(こども達には,土粘土で何をつくるかは自由であることを伝えた)。アイトラッカーで得られたデータは、相手の手元(主に造形操作を行っている場所)と頭部への注視行動の生起状況について、「行動コーディングシステム(DKH社)」を用いて数量化した。 幼児と児童の両群で比較検討を行った結果、幼児は全体的に相手の手元に視線を向けていく傾向があるのに対し、児童は手元に視線を向ける者とそうでない者で明確に分かれる傾向が見られた。また、幼児が児童の手元を注視した際に、児童が行っていた造形操作と類似する操作を幼児も行っているかを確認したところ、活動冒頭で児童を注視していた幼児は、その全てが児童に追随する行為を注視直後のタイミングで行っていた(それらの操作内容は、直接的な影響関係を否定しえない程に特徴的なものであった)。また、活動の途中段階においても、注視直後に児童に追随する行為を行う様子がいくつか確認された。総じて、異年齢ペアで行う造形活動においては、児童に比べ、幼児の方が造形操作に関する情報取得につながる他者への注視を行う傾向にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鳥取大学附属学校園等の協力のもと、2016年度は幼児後期のこども19名及び児童前期のこども19名が被験者として参加した。ただし、造形活動中にアイトラッカーがキャリブレーション(注視している部位を正確に特定するために眼球の状況を把握し、適宜補正すること)できなかったり、活動中に機器が外れてしまったりするケースがあった。この場合、記録は参考データとして扱い、統計的に分析する際には除外した。分析では、左記のケースを除いた幼児7名(平均年齢5.37±0.38歳)、児童7名(平均年齢8.07±0.29歳)のデータをメインで扱った。なお、本研究は鳥取大学の研究倫理審査会において承認を得て行っているものであり、被験者のこども全員の保護者とのインフォームド・コンセントを踏まえた上で進めている。 造形活動場所については、鳥取大学地域学部附属こども発達・研究センターの協力のもと、同センター内の行動観察室を使用した。当該施設には、別室から防音室内の様子を多方向からモニタリングすることが可能である。相手への眼差しの向け方や、粘土に対する造形操作の加え方など、こどもの活動中の様子を詳細に記録することができたことで、視線分析と関連させて用いることが可能となった。 以上の環境のもとで得られた研究成果は「研究実績の概要」で記したとおりであるが、他研究者とのディスカッションを通じて検証を行うために、自身が所属する学会において発表している(武田信吾,2016,「異年齢ペアによるこどもの造形活動における視線分析」,『日本発達心理学会第28回大会論文集』,p.602及び武田信吾,2017,「同席して造形活動する年長者に対する幼児の視線」,『日本保育学会第70回大会論文集』,印刷中)
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下のように進める計画である。 2016年度は、幼児と児童の組合せによる造形活動を分析することで,幼児期のこどもと児童期のこどもの異年齢同士による活動における他者観察による造形行為に関する情報の取得と活用の過程について明らかにする。その実施状況は、「研究実績の概要」及び「現在までの進捗状況」に記したとおりである。 2017年度は、幼児のみによる造形活動を分析することで,幼児期のこどもの同年齢同士での活動における他者観察による造形行為に関する情報の取得と活用の過程について明らかにする。併せて,伴に活動する相手が児童期のこどもであった場合と比較し,その相違点について明らかにする予定である。 2018年度は、児童のみによる造形活動を分析することで,児童期のこどもの同年齢同士での活動における他者観察による造形行為に関する情報の取得と活用の過程について明らかにする。併せて,伴に活動する相手が幼児期のこどもであった場合と比較し,その相違点について明らかにする予定である。 なお、研究協力者との調整状況により、幼児同士の造形活動と児童同士の造形活動の実施時期が前後する可能性もある。
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Causes of Carryover |
2016年度に行った研究事業について、その成果を発表し、保育学の見地から他研究者と検討を行う必要性があると判断した。日本保育学会の大会参加費をまかなうために、2017年度に研究資金を繰り越すようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年5月20~21日、川崎医療福祉大学で開催される日本保育学会第70回大会において研究発表を行う際の諸経費として使用する。
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Research Products
(2 results)