2016 Fiscal Year Research-status Report
国際化時代におけるリテラシー教育モデル構築のための基礎的研究
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16K17448
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中井 悠加 広島大学, 教育学研究科, 助教 (40710736)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国語教育 / リテラシー教育 / 国際社会 / 詩教育 / 詩創作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際化時代における子どもたちの「表現力」を基盤としたリテラシー学習論の構築を目指すことである。初年度である平成28年度は、主に(1)文献調査:国際社会におけるリテラシー教育と詩教育の関係、(2)実践開発:言語を超えたリテラシー実践開発、(3)日本の児童詩教育の事情把握という3つの課題に取り組んだ。 まず、子どもたちのリテラシー育成にとって詩教育が果たす役割と教育としての姿について資料・情報収集を行った。文献調査において、2つの英語圏であるイギリスおよびニュージーランドの国家カリキュラムおよび試験(GCSE、NCEA)における詩の位置づけを探り、その中で言語教育におけるアイデンティティと子どもたちの表現力との関係の強さを見いだした。次に、そうした2つの英語圏とは異なり英語を母語としないノルウェーと日本の国家カリキュラム(日本のものは学習指導要領)における国語/英語、Norwegian/Englishの特徴について比較考察を行った。その成果についてはUKLA国際学会2017で発表予定である。 同時に、言語の違いを問わないリテラシー育成に資する育成・支援方法としての指導法を探る手がかりのひとつとして、詩と絵を連動させて子どもたちから「ことばを引き出す」実践を開発し、小学校教員養成課程の大学生を対象として実施した。本成果は哲学的な視点を取り入れた比較国語教育論としてICP4C(子どものための哲学国際学会)で発表した。また同様に、絵を媒材として子どもたちと文学の出会いの場となる絵本にも注目し、読者反応理論に基づく日本の絵本の特徴を分析し、その一端をEECERA2016(ヨーロッパ幼児教育学会)で発表した。 日本における詩創作指導の基礎調査として、大正時代からの児童詩教育論および小学校国語科における現行教科書の詩創作単元を整理し、日本の詩創作指導論の事情把握に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題(1)に関しては、まず文献調査については英語圏・非英語圏を含んだ複数国のカリキュラムと詩の関係性を探ることができ、当初の予定通り進んでいる。特に、英語を母語としない(また日本語と同様国際社会においてマイナーと位置づけられる言語が母語である)国の事例として、ノルウェーの事情についてノルウェーの研究者であるHeidi Biseth氏の協力を得られたことは当初予定にはなかった成果である。ただし、リテラシー(国語・外国語)教育全体への傾倒がやや強く、詩教育・詩創作により焦点をしぼった考察が必要である。一方で、理論研修としてイギリスの研究者を招いたセミナー・ワークショップの開催を予定していたが、登壇予定者の事情により2017年度への延期が決定している。 課題(2)については、言語の違いを超える指導法開発に際し、絵という媒材を取り入れることで実践へと展開する視点獲得への可能性を見いだし、当初の予定に先んじて進めることができている。 課題(3)については、課題(1)における理論研修が延期となったため、その代わりに前倒しで進めることとした。そのため当初の予定より早く着手し始めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文献調査により得られた情報の考察を通して、リテラシー教育およびその中での詩創作指導論の構築を進める。また、延期になった理論研修である詩創作・クリエイティブライティングのセミナー・ワークショップは平成29年度中に開催できる予定で調整が進んでいる。開催後は、国際共同研究として教材開発に着手することを目指す。 また、平成29年度は視点を日本国内にうつし、文献調査を継続するとともに教師・子どもを対象として詩教育についての意識調査を行う。具体的には質問紙調査を計画している。 これらに基づき、海外においてほとんど皆無と言って良いほど知られてこなかった日本の児童詩教育論として発信し、海外からの客観的な評価を得た上で次年度の理論構築にいかす予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度中に開催予定だったイギリスの研究者を招聘してのセミナー・ワークショップが、登壇予定者の事情により平成29年度に延期となり、招聘に要する旅費・謝金用の金額をそのまま繰り越しにする必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、継続して行う文献調査用の文献収集、成果発表用の学会旅費(イギリス1回・国内1回)、質問紙による調査費として使用計画を立てている。 この使用計画に加えて、平成28年度に開催予定だったセミナー・ワークショップ開催に係る講師旅費・謝金、開催費として使用する。
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