2017 Fiscal Year Research-status Report
芸術教育の成果の捉え難さに関する研究:音楽の教授‐学習過程の構造と特質に着目して
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16K17449
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Research Institution | Tottori College |
Principal Investigator |
前田 舞子 鳥取短期大学, その他部局等, 助教 (60758126)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芸術教育 / 美的経験 / 教育評価 / 表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、芸術教育の成果の捉え難さ(なぜ難いのか、どのように捉え難いのか)を明らかにすることである。2年目となる2017(平成29)年度は、他教科とは異なる芸術教育の成果観の特徴とその捉え難さの土台を明らかにするために、主に音楽科の学習成果の捉え方と評価に着目してきた。そこから浮かび上がった示唆は、以下の2点である。 まず、音楽科が評価しようとする「表現」という「見えにくい学力」を捉えるためのパフォーマンス評価の難しさである。子どもの「表現」の芽生えとその発展過程は個人的なものであり、どのように「内なるもの」に気づき、どのような表現媒体と出会うか、ということには個人差がある。そのため、それぞれの「表現」を適切に評価する必要がある。当然、それを評価する教師の資質も問われることとなる。目指される唯一の固定されたパフォーマンス像を明確にするのではなく、教師自身が多様な表現(パフォーマンス像)を想定できないと、そもそも評価をすることができないということである。 次に、学校教育の教科として評価をすることと、芸術(音楽)として評価をすることの差異である。MI理論やその他の心理学研究において明らかにされている芸術の認知発達に関する諸理論は、これまで芸術教育に多大な影響を与えてきた。ただし、学校教育の枠内での評価を考える際には、芸術としての音楽の学習成果を測ること(例えば音楽コンクール)とは区別して考えなくてはならない。芸術教育に特有の学習成果の捉え方を追求することも大切だが、一方で学校教育の枠に収まり切らない芸術的な知能を評価することに限界を認めるべきではないだろうか。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究大会の日程や所属大学における業務の都合上、研究大会での発表を見送ったものがあったものの、予定していた研究内容の発表と論文執筆に関して遅れはないため、研究の進捗状況は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主に「表現」をキーワードとして、音楽科教育の評価という観点から研究を進めてきた。しかし、子どもの「表現」の芽生えや発展に関しては、心理学研究における研究蓄積があるのと併せて、幼児教育/保育の領域においても重要な概念である。幼児教育/保育の領域では、「表現」は音楽科や美術科のような教科の枠ではなく、総合的なものとして捉えられる。「環境を通した遊び」を評価する幼児教育/保育と、小学校以上の教科における評価には隔たりがあるし、そもそも学習の捉え方自体にも差異がある。しかしながら、音楽や美術に関する活動を「表現」として総合的に捉える視点が、芸術教育の学習成果を捉え難くしている既存の枠組みを振り返る1つの視点となりうるのではなかろうか。 したがって、本研究課題における当初の研究計画に加え、1年目の成果(幼児期の子どもの芸術活動)と2年目の成果(教科教育における「表現」の評価)を統合し、最終年度は「表現」を評価することの困難さについても整理したい。
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Causes of Carryover |
所属大学における業務の都合上、資料収集のための海外渡航費として計上していたものが未使用であること、また、予想よりも物品購入が安く済んだことによるものである。 未使用の予算については、次年度の研究大会参加費と旅費、資料収集のための旅費、さらに書籍購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)