2018 Fiscal Year Research-status Report
市民による歴史実践のつまずきや変容に関する実証的研究-学校歴史の役割に着目して-
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16K17454
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田口 紘子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10551707)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歴史実践 / 証言 / 教員志望学生 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,市民や教員志望学生を対象にした地域の歴史資源を活用する歴史実践プログラムの開発と評価を通して,民主主義社会への貢献をめざした歴史実践を可能とする学校歴史のあり方を考察することを目的としている。具体的には、(1)市民の歴史実践(歴史ガイドツアーなど)の特質や課題は何か、(2)歴史実践に向けた学校歴史(日本や米国の歴史教育)の特質や課題は何か、(3)(1)(2)をふまえた地域の歴史資源を活用する歴史実践プログラムを実施しての課題は何か、(4)(3)をふまえ歴史に主体的にかかわる主権者を育成する学校歴史はどうあるべきか、以上4点を4カ年で明らかにしていくこととする。 3年目である平成30年度においては、教員志望学生による教員や児童生徒を対象にした歴史実践プログラムの特質とそこへの参加者の判断・表現内容の分析を主に行った。平成28年8月に実施した教員志望学生による歴史実践プログラムとして現職教員向けプログラムと児童生徒向けプログラムの2つを分析対象にし、プログラム中のグループ活動となる証言の読み取りや証言紹介カード作りを計画した教員志望学生とそのプログラムに参加した現職教員や児童生徒の活動中の言動や制作物を分析した。 教員志望学生は、戦争体験者へのインタビューや戦時中の体験が綴られた文集を使ってプログラム中の活動を計画したが、方言や語られていないことについての解釈や証言の切り取りに困難を感じていた。特に従来の学校の歴史学習や平和学習などでは戦争の悲惨さを強調する体験のみが取り上げられがちなこともあって、地域の証言においてもそのような体験の証言を選択しがちであった。現代とは異なる戦時中特有の体験のみを強調しすぎることは、学習者に戦争を遠い昔のこと、現代では起こりえない愚かな過ちと捉えさせてしまう傾向もあり、地域の証言者の選択や証言の切り取り方が課題となることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年11月から2018年1月に産前産後休暇を取得し、その後は育児休暇を取得せずに教育と研究に取り組んでいるが、子どもの世話や体調不良などで研究時間の確保が課題になっている。分析結果を学会発表する予定であったが、双子を預けての出張も難しく、発表できなかった。最終年度に計画の遅れを挽回したい。
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Strategy for Future Research Activity |
1歳の双子の世話があり、研究成果の発表や調査のための出張が難しい。近隣県での学会発表や学会発表せずに論文投稿するなどしたい。それ以外は当初の予定通り実施できると考える。地域の歴史資源を活用する歴史実践プログラムの分析結果を整理し、民主主義社会への貢献をめざした市民による歴史実践を可能とする学校歴史のあり方をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
理由:育児休暇を取得せずに復職したが、子どもたちの世話や体調不良のため研究時間の確保が難しく、学会発表や調査が実施できなかった。それにともない、データ入力や分析も実施できず、謝金や物品費、旅費の予算一部を執行できなかった。 使用計画:子どもたちも1歳になったため、預けて出張に行くことが可能か調整中である。海外調査が難しい場合は、文献調査に切り替え、学会発表も近隣県で行われるものに的を絞って発表し、予算の執行を行いたい。
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