2016 Fiscal Year Research-status Report
科学的探究を見通す能力を育む教授ストラテジーの開発―探究の全体像と多様性の理解
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16K17456
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
石崎 友規 常磐大学, 人間科学部, 助教 (60747020)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 理科教育 / 探究学習 / ナラティヴ / シュワブ / ブルーナー / 探究の全体像 |
Outline of Annual Research Achievements |
シュワブの探究学習論やそれに関連する文献(Schwab,1962,Norris, et al.,2005 他)を吟味し,探究の多様性理解をも目指した「探究のナラティヴ」として相応しい題材を選択するための観点を明確にした。次に,そこで明らかになった観点に基づき,「探究のナラティヴ」の題材となり得る事例を選択した。 また,ナラティヴ論の基礎として近年再び注目を集めているブルーナーにも着目し,文献調査により,シュワブ,ブルーナー両者のナラティヴに関する議論を検討した。その結果,両者とも,探究の過程で生じる困難な状況をナラティヴとして取り上げる重要性を主張していることが分かった。そして,特にブルーナーの場合,探究を物語的に語る際,語り手は語ろうとする内容を解釈する必要があり,しかも,物語解釈では解釈学的循環が行われている点に留意することを主張していた。これらの主張は,探究過程の理解を指向した「探究のナラティヴ」を基盤とする教授方略を開発する視点の一つになり得ることが明らかになった。 これらの成果は,科学的探究の物語の生成・解釈過程において,学習者がメタ的に科学的探究を理解する機会が生じ得ることを示唆するものである。また,ナラティヴの中で,解釈学的循環を適切に作用させるのが鍵となることも示唆されている。これらのことから,本研究のテーマである科学的探究の全体像理解のための教授法,ひいては探究の流れをイメージするための教授法に関する基礎的知見が得られた,と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究を精査したところ,ブルーナーのナラティヴ論に着目することに対する有益性が明らかとなり,追加の文献収集を行ったため。また,探究のナラティヴの事例を収集する計画であったが,調査対象の科学研究者,中学校,高等学校教員との連絡調整に予想以上の時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
追加で整理が必要となった,ブルーナーによるナラティヴ論の成果をできる限り早急にまとめる。 また,ナラティヴの事例として取り上げる科学的探究を収集するべく,自然科学を中心とした研究に従事している研究者,中学校や中等教育学校の理科教員へのインタビューを通を行う。そのため,引き続き関係各所との連絡調整を進める。 その後,抽出した探究事例を精選し,探究の全体像と多様性の理解を促す「探究のナラティヴ」として再構成する。
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Causes of Carryover |
先行研究を精査する中で,ブルーナーによるナラティヴ論に着目することへの有益性が判明し,文献調査を中心とする研究に変更したため。 また,海外の科学テキストの選定・購入に想定以上の時間が掛かり,年度内に購入が完了しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
科学研究者や学校現場教員へのインタビューを行うため,音声記録用のICレコーダー,データバックアップ用外付けハードディスクを購入する。 また,海外の科学テキストにおけるナラティヴの事例を分析するため,海外の科学テキストを購入する。
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