2016 Fiscal Year Research-status Report
道徳教科化に向けた役割取得能力の発達に応じた道徳授業の実践‐学校適応による検討‐
Project/Area Number |
16K17457
|
Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
本間 優子 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 准教授 (40410253)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 役割取得能力 / 学校適応 / 道徳教育プログラム / 児童 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は実施が容易で効果的な道徳教育プログラムを開発し,その効果を検証することを目的とした。具体的には,道徳授業において役割取得能力を促進し,学校適応を向上させることを目的とした実践プログラムを行い,効果を検証することを目的とした。 対象者は公立小学校3年生の児童であった。プログラムの開始に先立ち,事前調査として役割取得能力測定課題(本間・内山,2002b),学校適応の行動面の測定として,教師評定によるクラス内行動尺度(本間・内山,2002aおよびCairns, Leung, Gest, & Cairns, 1995),学校適応の感情面の測定として,大対・堀田・竹島・松見・Ladd(2006)より日本版が作成された,SLAQ(Ladd & Price, 1987)の下位尺度である学校肯定感 (9項目)を用いて測定を行った。事前調査終了後,道徳授業において週1回×4回,プログラムを行った。授業中のディスカッションの効果の検証として,プログラム毎に,児童にワークシートに記載されている「みんなと話し合って考えが変わりましたか」という質問項目に「変わった」「変わらなかった」のどちらかに丸をつけてもらい,その理由について記述してもらった。その他の効果検証ついては,実践プログラム実施前に行ったものと同様の調査を行った。話し合いの効果として,4課題いずれも平均すると半数以上の児童が話し合いにより自分自身の考えが「変わった」と回答していることが示された。また,約1/3の児童の役割取得能力の発達段階が,プログラム実施後は1段階上の発達段階に向上していることが示された。学校適応については,教師評定については肯定的な変化が示されが,児童評定については,変化は示されなかった。プログラムの実践期間が1ヶ月間であり,児童自身の主観的認知までは影響しなかった可能性があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は役割取得能力課題と道徳的判断の発達段階を測定するためのモラルジレンマ課題の両方を行う予定であったが,実践プログラム実施校とは異なる小学校の3,4年生に調査し,両者の関連を確認したところ,両者の発達段階が一致している児童が(例えば,役割取得能力の発達段階が2であれば、道徳的判断の発達段階も段階2)60.7%,役割取得能力の発達段階の方が高いため(たとえば,役割取得能力の発達段階が2であれば,道徳的判断の発達段階は段階1)一致していない児童が35.0%,道徳的判断の発達段階の方が高く,一致していない児童が4.3%であることが明らかとなった。両者の一致度が過半数以上あり,一致していない場合も,大部分の児童において,役割取得能力の発達が道徳的判断の発達に先行することが示されたため,学校現場への負担を軽減するために,介入プログラム実施校ではモラルジレンマ課題は行わないこととした。この点は研究計画と異なるが,あとはほぼ研究計画どおりに遂行できたと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に実施した、役割取得能力の促進を目的とした実践プログラムにおいて役割取得能力の発達段階の変化がなかった児童の中で、向社会的行動得点が低い児童について個別介入を行う。また、成果についての学会発表も随時行っていく。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は道徳教育プログラムの実践が主だったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度で得られた成果を積極的に学会で発表していく。研究費については、学会参加費および平成28年度で得られた音声データについて逐語録を作成する費用、統計分析ソフト購入などに当てる予定である。
|