2016 Fiscal Year Research-status Report
フロー理論に基づいたヴァイオリン集団学習の実践的研究
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16K17459
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
安久津 太一 就実大学, 教育学部, 講師 (00758815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フロー理論 / 芸術教育 / 音楽教育 / 代替評価 / フロー評価 / ヴァイオリン / 音楽的発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、ヴァイオリン学習場面におけるフロー観察、そしてフロー理論をベースにしたヴァイオリン学習の新しい実践開発が遂行できた。大きな成果の一つとしてインパクトファクターを有する国際誌に、本研究をベースにした弦楽器授業の実践が英文の原著論文として受理されたことがあげられる。題目はConstructing a fast protocol for middle school beginner violin classes in Japan。単著で雑誌名は国際音楽教育学会が発行するInternational Journal of Music Educationである。限られた日本の音楽の授業時間数の中で,生徒が早期に弦楽器の音やアンサンブルを体験的に学習できる新しい指導のアプローチが高く評価された。あわせて国内の査読誌として、日本音楽教育学会刊行の音楽教育実践ジャーナルに「子ども一人一人の学びを保証するツールとしてのフロー観察:幼児のヴァイオリンや他者との関わり合いの観察を通して」が掲載された。その他著書として米国の教育学の教科書の編著に携わり、本研究の骨子である音楽教育分野のフロー評価を扱った器楽合奏の授業実践が、査読を経て掲載された。書名はChallenges Associated with Cross-Cultural and At-Risk Student Engagement(Eds. Gordon, Akutsu, McDermott, Lalas)である。国内外の学会発表のほかにも、ニューヨーク大学(NYU)や米国ニューワールド交響楽団でのレクチャー&ワークショップで、研究を紹介した。あわせて日本とアメリカの学校園で実践を試行し、大きな成果をあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際誌や国内外の関係の各学会において非常に高い評価を得たことが主な理由である。あわせて国内外の学校園や教育機関で、研究をベースにしたワークショップを複数回開催し、研究と実践の連関においても大きな成果をあげることができたと考えている。実践開発と、ヴァイオリン学習場面におけるフロー評価の手法は、一定程度の水準で確立されたと考えている。あわせて、実践者が研究者として取り組む、実践研究の方法論の確立にも大きく貢献した。すなわち、従来のデータ収集ではなく、日常的な研究者・実践者、参加者との関わり合いの中で、データが創発されていく、古くて新しい研究手法を用いて、成果が国際誌等で評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児・児童・生徒とヴァイオリンの関わりの中で経験するフローを評価すること、そしてフローに着眼したヴァイオリン授業の実践開発に一定の成果をあげることができた。今年度は、上記の成果を、より多くのフィールドで実践し、かつ学会発表の場で検証し、その精度を高めていきたい。具体的には、国際音楽教育学会の環太平洋大会(7月マレーシアで開催)や、日米教員養成協議会(8月ハワイ大学開催)に、すでに口頭発表及びワークショップが採択されており、これらの学会活動を軸に、研究及び実践を一層発展させていく。あわせて実践研究の研究方法論の確立を目指す。例えば臨床医学で一般的な無作為化比較試験は、教育の分野では適応しにくい。質的研究、特に事例研究や事例報告の重要性を、研究論文としての国際発信を通じて保証していきたい。実践者と研究者の協働、あるいは、実践者が研究者として現場に関わる研究者の立ち位置も明確化したい。また、中長期的な将来構想として、音楽教育分野におけるフロー評価を、鑑賞や表現のすべての領域で応用し、学校教育現場における代替評価の手法として確立させていくことを目指している。さらに実践のフィールドとして、今後特別支援教育の現場、特に視覚障害や肢体不自由の児童・生徒の音楽活動の評価手法の確立にも本研究の応用が期待されるており、新たな実践研究を展開していく所存である。
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