2016 Fiscal Year Research-status Report
途上国における大規模調査を用いた理数科学力に関する研究
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16K17460
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Research Institution | Miyazaki International College |
Principal Investigator |
渡邊 耕二 宮崎国際大学, 教育学部, 准教授 (30736343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大規模調査 / 国際比較 / PISA / TIMSS |
Outline of Annual Research Achievements |
教育の質について考えると、教師や教科書・教材などのインプットの質だけでなく、アウトプットの質、つまり、学校教育を受けた成果としての学力が重視され始めている。一般に、途上国の数学や理科に関する学力水準は低い。学力向上は、教育の質を論じる上で不可欠な視点の一つであり、理数科学力の向上は、理数科教育協力における根本的な課題である。 学校教育の成果として理数科学力を位置付けると、数学と理科という異なる教科に目を向けるべきであり、数学と理科を互いに関係付けることに教育的な価値があることが知られている。例えば、理科と関係付けて数学を指導することで、抽象的な数学の概念の学習を促進する例を提供でき、数学と関係付けて理科を指導することで、自然現象を定量化し、分析するための道具を提供できる。社会の問題は、数学と理科の知識を用いて解くことが多く、それらの学習が分離するならば、適切に現実社会の問題を解くことができないと指摘される。また情意面に関する研究から、数学と理科を関係付けることで興味・関心を喚起できるとされる。 これらを踏まえると、理数科学力を学校教育の成果の一つとすれば、数学と理科に関する学力が互いに関係付くべきであろう。この視点に立てば、途上国のような理数科学力の水準が低い国においては、数学と理科の学力の関連性が決して大きくないと考えられる。 そこで、学力水準が低い国は、数学と理科に関する学力の関連性が高い国と比べて小さいと考え、このことを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、数学と理科に関する学力の関連性について国際比較分析を行った。一般に、国際的にみて数学の学力が高い国は、同様に理科の学力水準も高い。しかしそれらは、異なる構成概念であるため、各国国内でどの程度関係するかは定かではない。数学と理科に関する学力の関連性の大きさも、学力水準の高低と関係することを掴んだ。また、理数科学力を多面的に検討するために、情意面および学習方略との視点からの分析にも取り掛かった。このように、平成28年度の研究はおおむね順調に進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も研究計画に従い、研究を推進していく。平成28年度では、PISAのデータを主な分析対象として研究を進めた。続いて、TIMSSのデータにも目を向ける。PISAの分析結果を対比させた考察が可能なように、必要な変数の選択とデータ処理に取り組んでいる。次年度では、TIMSSのデータを用いた分析を主として進め、PISAとTIMSSの分析結果を統合して得られる知見の獲得を試みる。
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