2017 Fiscal Year Research-status Report
共に学ぶ場における発達障害児と典型発達児の他者・自己理解を促進する心理教育的支援
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16K17465
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
李 煕馥 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, インクルーシブ教育システム推進センター, 研究員 (40708385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自閉スペクトラム / 典型発達 / 他者理解 / 自己理解 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達障害児と典型発達児が共に学ぶ場において形成される他者・自己理解の特性やそれを支援する方策について検討することを目的としている。今年度は、主に以下の3点について取り組んだ。1点目は、自閉スペクトラム症(以下ASD)児の他者理解の特性について詳細に検討するために、ASD児と典型発達児を対象とし、相手の知識状態を考慮してある出来事について伝えることができるかについて検討した。この結果については学術誌に掲載することができた。2点目は、通常学級に在籍する特別な支援を必要とする子どものうち、発達障害のある子どものみならず、知的能力は非常は高い(ギフテット児)が社会情動面において特別な支援・配慮が必要な子どもにおける他者・自己理解の特性について、学会のシンポジウムを開催し、議論することができた。ギフテット児は自己肯定感が低く同年齢集団において孤立してしまう恐れが高い等、ギフテット児ならではの他者・自己理解における特別な支援ニーズについて課題意識をもつことができた。3点目は、本研究では、日本と韓国との比較検討が計画されている。その前段階として韓国の小・中・高等学校に訪問し、障害のある子どもと障害のない子どもがどのように交流を進めているかについて実地調査を行うことができた。韓国では典型発達児が障害のある子どものピア・サポーターになり、授業や日常生活において支援を行っていることや、サークル活動を共に行う取組が盛んに行われていた。韓国のこのような取組が、発達障害児や典型発達児の他者・自己理解の発達に与える影響について今後検討していく。 今後は、今年度の実績を踏まえ、訪問調査や質問紙調査等を通して、ともに学ぶ経験が発達障害児や典型発達児の他者・自己理解の発達に与える肯定的な影響について検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、本研究の目的と関連して自閉スペクトラム障害児の他者理解の特性に関する詳細な検討や、通常学級に在籍する様々な支援ニーズを有する子どもの他者・自己理解の特性、韓国における障害のある子どもと障害のない子どもとの交流に関する実地調査は実施できた。しかし、共に学ぶ経験が発達障害児と典型発達児の他者・自己理解に与える影響に関する調査の実施が遅れたことや、それに伴い支援方策を検討することが遅れていることから、「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、以下の3点を推進していく。1点目は、発達障害児と典型発達児がともに学ぶ交流及び共同学習を推進している小学校等へ訪問し、交流及び共同学習の推進によって、発達障害児と典型発達児の他者・自己理解を中心とした社会性にどのような変容がみられているかについて、担当教員による聞き取りや、実際の子ども同士のかかわりの様子について調査を行う。2点目は、それをもとにして、発達障害児と典型発達児の他者・自己理解を中心とした社会性発達において共に学ぶ経験が与える影響について検討するために質問紙を用いて調査を行う。上述した訪問調査をもとに、質問紙を作成し、実施する予定である。この調査を通して、共に学ぶ経験が発達障害児や典型発達児に与える肯定的な影響を明らかにしていく。3点目は、自閉スペクトラム障害児の他者・自己理解の発達について検討する。定期的に授業参観を通して幼児期の自閉スペクトラム障害児の他者・自己理解がどのように発達していくのか、縦断的にデータを収集していく予定である。この調査を通して、教育現場において他者・自己理解をアセスメントするツールの開発につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた調査の実施が遅れたため、次年度使用額が生じている。これに関しては、次年度の助成金と合わせて、学校訪問や調査実施、分析等に必要な経費として支出する予定である。具体的には、学校訪問に係る旅費、聞き取り調査に対する謝金、調査質問紙の印刷及び発送費、分析に係る費用、調査や分析に係る物品購入等である。さらに、学会等で成果を発表するための費用としても支出する予定である。
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