2019 Fiscal Year Research-status Report
共に学ぶ場における発達障害児と典型発達児の他者・自己理解を促進する心理教育的支援
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16K17465
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
李 煕馥 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, その他, 特任研究員 (40708385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 自己理解 / 他者理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)児の自己理解や他者理解の発達過程を明らかにするとともに、典型発達(TD)児との関係性の中でのASD児の自己理解や他者理解の特徴や支援方策を検討することを目的としている。今年度は、二つの研究を進めてきた。一つは、ASD児の自己理解や他者理解の発達過程を縦断的に検討する研究である。この研究は、今年度が2年目であり、これまでみられた発達過程を学会発表や論文にまとめ、発表することができた。この研究では、1名のASD児(研究開始時3歳)の自然な学校生活場面を記録する方法をとっており、担当教員や保護者との定期的な意見交換を通して総合的に検討している。これまでみられたASD児の発達過程としては、教師(他者)を不特定の第3者としてとらえていたASD児が教師と愛着関係を形成し、教師と楽しさ等の情動を共有する等の様子が見られている。今後も引き続き、縦断研究を進めていく予定である。 二つ目の研究は、ASD児がTD児との関係の中で示す自己理解や他者理解の特徴に関するものであり、特に小学校の自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍しているASD児に注目してきた。学校訪問を通してASD児が学校生活の中で、特にTD児との関係の中でどのように自分自身をとらえているか、他者を理解しているかという様子を観察記録してきた。TD児との関係の中でASD児が自分自身や他者について理解していくことやそれに伴う情動的な反応については、丁寧な支援が必要であることを改めて感じている。ASD児の学校生活や学業を支えるためにも、ASD児が学校生活の中で、TD児とどのような関係性を形成しているか、その中で自分や他者をどのようにとらえているかを可視化し、支援につなげられる方策を、今後検討していく予定である。この研究は、今後より深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、ASD児の自己理解や他者理解について発達的な過程をとらえるとともに、他者との関係性の中でとらえるものであるため、学校現場に入り込んで進める必要性が高いものである。発達的過程に関する縦断研究は、2年間学校とも良好な関係を築いてきており、順調に進められている。しかし、小学校等をフィールドにする研究においては、教師や対象となる子どもたちと信頼関係を形成することが重要であるため、慎重に進めている。そのため、計画よりやや遅れている状況である。 また、私的な家庭事情(夫の単身赴任や子育て)により、時間的な制約が理由で学校訪問等を積極的に行えなかったことも理由の一つである(今年度の学校訪問は2~3か月に1回程度であった)。
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Strategy for Future Research Activity |
ASD児の自己理解・他者理解の発達的な過程を縦断的に検討する研究は、継続的に行う予定であり、年度後半には、3年間の様子についてまた論文にまとめ、発表する予定である。 小学校等への訪問を通して、ASD児の自己理解や他者理解の特徴や支援方策を検討する研究は、今年度も引き続き同じ学校に訪問し、継続的に行う予定である。これらについては、担当教員の承諾を得ている。 しかし、新型コロナウィルスの影響により、学校訪問が難しかったり子どもの様子を観察できない事態も想定される。その際は担当教員と相談しながら、今後の情勢を鑑みながら研究方法等について随時見直していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究遂行がやや遅れているためである。当初の予定としては、調査研究も今年度中に行う予定であったが、研究遂行において研究フィールドである学校や担当教員等とラポールを形成する必要があったこと、私的な家庭事情により研究遂行時間に制約が生じたことにより、予定していた調査研究が実施できなかったため、次年度使用額が生じている。
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