2016 Fiscal Year Research-status Report
単一ナノ発光材料のモルフォロジー分析技術の開発と量子物性の解明
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16K17483
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井原 章之 京都大学, 化学研究所, 助教 (10619860)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 半導体ナノ粒子 / コロイド量子ドット / ナノ発光材料 / 吸収断面積 / モルフォロジー / 光子相関 / カスケード発光 / 発光効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ発光材料のもつ量子的な性質を深く理解することは、その材料を用いた光デバイス・光源・光技術の開拓を目指す研究分野において重要な課題である。本研究では、様々な単一ナノ発光材料に活用できる新しいモルフォロジー分析技術を開発することを目指した実験を実施した。本年度は、単一のナノ材料の発光の2次の光子相関を時間分解して計測し解析を行う、新しい吸収断面積スペクトル測定技術の開発を進めた。発光効率と検出効率の見積もり誤差に影響されやすい従来手法の問題点を解決するために、モデル計算を活用した解析技術を導入した。モデルには、多光子吸収プロセスと、2光子カスケード発光プロセスにおける非輻射再結合過程の影響を考慮した。測定装置の改良・解析技術の導入により、従来の吸収断面積スペクトル測定法の問題点を解決することができた。
開発した手法を用いて、単一ナノ発光材料のモルフォロジー分析法の開発に向けた測定を実施した。直径が10 nm程度のサイズのCdSe/ZnSナノ粒子を対象に、吸収断面積の測定を行った。単一ナノ粒子に対して同時計測した2次の光子相関と減衰曲線を精密に分析することによって、吸収断面積の絶対値を決定できることを明らかにした。粒子サイズに応じて吸収断面積が変化することを意味する実験データを得ることができた。複数の粒子を測定した際に現れる統計的性質や、直線偏光の励起光を用いて測定した際に現れる偏光依存性を明らかにした。高密度励起条件下で活用できる新しい解析技術の構築にも着手することができた。励起子分子と励起子の輻射再結合レートの比を正確に決定できることを示唆する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通りに、単一ナノ粒子の吸収断面積の測定法に関して、従来手法のもつ問題点を解決することができた。単一ナノ粒子の吸収断面積を決定するだけでなく、2光子カスケード発光の特徴に関しても、多くの新しい知見を得ることができた。研究開始時には困難と予想していた、高密度励起条件下で活用できる新しい解析技術の構築にも着手することができた。励起子分子と励起子の輻射再結合レートの比を正確に決定できることを示唆する重要な知見も得られた。これらの点を考慮し、おおむね順調に研究が進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した実験によって得られた知見に基づいて、吸収断面積スペクトル測定・モルフォロジー分析を活用し、ナノ発光材料の量子物性を解明するための実験に取り組む。初年度に着手した、高密度励起条件下で活用できる新しい解析技術の有効性を明らかにする。創出した新しい解析技術を活用し、2光子カスケード発光の寿命や量子効率の性質を調べる。高密度励起条件下で生じやすい粒子のイオン化が、2光子カスケード発光の寿命や量子効率に与える影響を解明するための実験を実施する。また、異方的な形状をもつナノ粒子に対する吸収断面積スペクトル測定を実施し、その特徴を明らかにする。所属機関が変わることとなったが、以前の所属機関の共同利用制度を活用し、研究を推進する計画である。これら単一ナノ発光材料のモルフォロジー分析技術の開発と量子物性の解明に関連する成果を取りまとめ、論文発表や学会発表を行う。
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