2016 Fiscal Year Research-status Report
優れた触媒特性の発現を目指したsurface clean異方形態ナノ触媒の創製
Project/Area Number |
16K17490
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊村 芳郎 東京理科大学, 工学部工業化学科, 助教 (70756288)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 形態制御 / 触媒 / 貴金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
貴金属ナノ結晶は、サイズや形態、表面の結晶構造により触媒特性が大きく変化することが知られている。本研究では、様々な形や金属からなる異方形態ナノ触媒の創製を行い、その触媒能を詳細に評価することを目的としている。これらの達成のために、メラミンを保護剤分子として用いて得られるアルミナ担持金ナノ金平糖に着目した。これまでに、メラミン分子の効果的な除去手法を確立することで、球状粒子よりも金平糖構造の方がアルコールの酸化反応触媒として約10倍も触媒能が高いという知見を有している。本年度は、金ナノ金平糖の調製手法の最適化による触媒能の更なる向上や、担持金ナノ金平糖の溶媒に対する安定性について検討した。 金ナノ金平糖がアルコールの酸化反応に対して示す高い触媒活性は、結晶表面に多く存在する凹凸構造に由来する。調製時のメラミン量や還元剤量などの最適化を行うことで、ナノ金平糖表面の凹凸構造が増加し、従来の金ナノ金平糖に比べて触媒能を1.5倍まで向上させた。さらに、アルミナ担持金ナノ金平糖の分散安定性評価についても検討した。担持前は、水に対する分散性を示す一方で有機溶媒には分散しなかったが、担持操作によって有機溶媒中でも長期間安定に存在できることが分かった。また、金ナノ金平糖はアルミナ上に強く吸着しているため、触媒として利用しても金ナノ金平糖同士の凝集融合は見られなかった。つまり、これら担持操作により金ナノ金平糖の分散安定性が大きく向上できるという知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、触媒特性に大きくかかわる金ナノ金平糖の表面凹凸構造の割合の増加に成功した。これにより、高触媒活性の異方形態ナノ触媒の調製という本研究の目的達成へと大きく前進した。さらに、担持操作による分散安定性向上についての知見は、ナノ結晶の触媒利用に向けて非常に有意義なものであると言える。これらの研究成果を総合することで、金以外の貴金属への研究展開が可能になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、新たに合金結晶による担持ナノ金平糖の調製に取り組み、より高活性なアルコールの酸化反応触媒を得ることを目標とする。金ナノ結晶は、白金やパラジウムといった他の元素と合金化することで触媒能が大きく向上することがわかっている。このため本研究においても、平成28年度で得た担持金ナノ金平糖をベースとして異種金属から成る合金ナノ金平糖を作製することで、触媒能向上を目指す。触媒能が大きく変化する因子として金属の構成比や表面の凹凸構造の状態に着目し、これらを制御しながら最も触媒能向上に寄与するナノ金平糖調製条件の策定を行う。 また、担体の種類と触媒能の相関性にも着目していく。アルコールの酸化反応の触媒能の向上には担体種類の検討が重要と捉え、平成28年度で用いたアルミナだけでなく触媒能の向上が期待できる酸化チタンなどを担体として用いて、担持ナノ金平糖触媒の調製を行う。まず金ナノ触媒についての検討を行い、ついで合金ナノ触媒に関しても担体による影響を評価する。これらを通して、これまでにない高活性なアルコールの酸化反応触媒の創製といった本研究の目的を達成する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究遂行により、触媒担持には当初予測していた以上の効果があることがわかった。これにより、平成29年度における担体効果の検討項目を増やす必要が生じた。必要な機器購入のため、二ヵ年の経費配分を見直し、平成29年度の使用額を確保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度と同様の消耗品のほか、担体効果の研究遂行に必要な備品購入に使用する予定である。
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