2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子規則配列と空隙構造制御を可能とする超低密度ナノコンポジットの創製
Project/Area Number |
16K17491
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹下 覚 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 研究員 (90631705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノコンポジット / エアロゲル / 蛍光体 / ナノファイバー / キトサン |
Outline of Annual Research Achievements |
金属有機構造体の金属イオンと有機配位子の関係を模倣し、無機ナノ粒子とポリマーナノファイバーを架橋により複合化させることで、空隙構造制御が可能な超低密度ナノコンポジット材料「エアロコンポジット」の新規開発に取り組んだ。最終的な目標はナノ粒子が規則的に配列した高空間秩序を実現することであるが、平成28年度ではまずその足掛かりとしてナノ粒子がランダムに分布したエアロコンポジットの合成を行い、従来の緻密なコンポジットにはない機能を有することを例証した。 ナノ粒子として還元剤に応答して蛍光強度が変動するYVO4:Eu3+ナノ粒子を、ナノファイバーとしてキトサンナノファイバーを選択した。キトサン水溶液に架橋剤を添加してゲル化させ、このゲルにY(3+)/Eu(3+)イオンとVO4(3-)イオンを交互に吸着させることで、ゲル内部でYVO4:Eu3+ナノ粒子をその場生成した。さらに、高圧CO2を用いた超臨界乾燥によりゲルの収縮を最小限に抑えつつ乾燥し、YVO4:Eu3+ナノ粒子/キトサンナノファイバー複合エアロコンポジットを得た。得られたコンポジットは超低密度(空隙率97~98%)で、可視光透過性と機械的柔軟性を兼ね備える。このコンポジットをホルムアルデヒド蒸気に暴露しつつ紫外光を照射したところ、ホルムアルデヒド濃度に対応して蛍光強度が低下し、センシング機能を発現した。同様の実験を緻密なYVO4:Eu3+/キトサン複合樹脂を用いて行ったところ、蛍光強度のホルムアルデヒド濃度依存性は認められず、応答速度(蛍光強度低下の時定数)も20倍以上遅かった。以上の結果は、エアロコンポジットの高空隙率な空間構造が周囲のガスのナノ粒子へのアクセスを可能にしており、従来の緻密なコンポジットではなしえなかった機能を発現できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ナノ粒子がランダムに分布したエアロコンポジットの合成と、従来の緻密なコンポジットにはない機能の例証を達成したうえで、これらの成果を学術論文誌に投稿し、掲載された。したがって、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の成果を足掛かりとして、エアロコンポジット材料の基盤技術の構築に継続して取り組む。ナノ粒子として蛍光以外の機能を有する材料を選択し、従来の緻密なコンポジットにはない機能の例証を引き続き行う。また、コロイド結晶などで見られる微粒子の自己集合現象と、平成28年度に確立したナノ粒子/ナノファイバー複合化技術を融合し、ナノファイバーネットワーク内でのナノ粒子の空間規則配列を実現する方法を探究する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の成果について国内学会・国際会議発表のための費用を確保していたが、成果の取りまとめと学会時期が合わず繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度内に国内学会または国際会議での発表を行い、国内外の研究者に本課題の成果をアピールする。
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