2017 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子規則配列と空隙構造制御を可能とする超低密度ナノコンポジットの創製
Project/Area Number |
16K17491
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹下 覚 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (90631705)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノコンポジット / エアロゲル / 蛍光体 / ナノファイバー / キトサン |
Outline of Annual Research Achievements |
金属有機構造体のもつサブナノ~ナノメートルスケールの3次元空隙構造は、種々の物理化学的機能を有するナノ空間として注目されている。この空隙構造を10~100倍のスケールに拡張して新たな機能を発現させるため、ナノ粒子とナノファイバーをビルディングブロックとし、空隙構造の制御が可能な超低密度ナノコンポジット材料「エアロコンポジット」を提案した。金属有機構造体における金属イオンと有機配位子の関係を、無機ナノ粒子とポリマーナノファイバーでそれぞれ模倣し、これらを架橋して複合化させることでエアロコンポジットの実現に取り組んだ。 これまで、ナノ粒子が3次元空間にランダムに分布したエアロコンポジットの合成法を探究し、ナノファイバーからなる超低密度・高空隙率な3次元網目構造内にナノ粒子を固定することで、ナノ粒子があたかも何もない空間に固定されたかのような独自の3次元構造を持つ多孔体を合成した。また、このエアロコンポジット内のナノ粒子表面がマトリクスに埋もれることなく外気に晒されている点を利用して、従来の緻密なコンポジットにはない外部環境応答機能を発現することを例証した。これらの成果について、昨年度の学術論文投稿に引き続いて国際会議での成果発表を行った。さらに、上記の3次元構造の形成プロセスを探究し、とくにナノファイバーの形成メカニズムの一端を明らかにした。今後は、ナノファイバーの3次元網目構造の形成メカニズムを引き続き探究し、ナノ粒子やナノファイバーの規則配列と空隙構造の高空間秩序性の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無機ナノ粒子として蛍光機能を有する複合酸化物ナノ粒子を、ポリマーナノファイバーの素材として生物由来高分子の一種であるキトサンを選択し、キトサンナノファイバーの3次元網目構造により形成された空間に、ナノ粒子がランダムに分布したエアロコンポジットの合成方法を確立した。また、従来の緻密なコンポジットと比較し、外気中の揮発性有機化合物に反応して蛍光強度が変化する環境センシング機能を有することを実証した。 また、ナノ粒子の配列や空隙構造を制御する手法を探究するため、キトサンナノファイバーの3次元網目構造の形成プロセスを探究した。その結果、湿潤なゲルから乾燥したナノファイバー多孔体への転換過程において、湿潤ゲルの体積相転移を伴う溶媒交換と、これに続く乾燥プロセスがファイバー状構造形成の主要因であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の成果を足掛かりとして、エアロコンポジット材料の基盤技術の構築に継続して取り組む。とくに、ナノ粒子の空間配列や空隙構造の高秩序性を実現するため、ナノファイバーの3次元網目構造形成メカニズムを引き続き探究し、ナノファイバーのサイズやアスペクト比、分岐構造、空隙サイズとその分布を制御する因子を明らかにする。並行して、蛍光体ナノ粒子以外の機能性ナノ粒子とキトサンナノファイバーとの組み合わせを探究し、エアロコンポジットの素材と機能の幅を拡張する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の成果について国内学会・国際会議発表のための費用を確保していたが、探究を進めるとともに材料の興味深い性質が明らかになってきた。さらに十分な検討を行ったうえで研究成果を取りまとめたほうが適していると考えられたため、学会発表を繰り越した。平成30年度により包括的な研究として取りまとめ、国内学会または国際会議での発表を行い、国内外の研究者に本課題の成果をアピールすることを予定している。
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Research Products
(1 results)