2016 Fiscal Year Research-status Report
固液界面レーザー誘起反応を利用した透明樹脂上への微細周期構造付加技術の開発
Project/Area Number |
16K17493
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中住 友香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 研究員 (80738021)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザー / 微細構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノサイズの構造体を利用して、表面に機能を付与する技術が注目を集めている。特に光の波長以下のサイズの微細な突起を無数に並べた周期構造体は基材表面で光の反射を抑制することができるため、テレビや太陽電池、LED等の表面に応用されている。このような微細構造体を作製する方法として、ナノインプリント法が活用されている。ナノインプリント法はナノサイズの構造をもつ精密な金型を利用して、微細な構造体を作製する手法である。一方、光を用いる直接描画法による微細構造体の作製手法では、光強度の空間分布を制御して構造体を作製するため金型が不要である。金型は作製コストが高く、一度作製してしまうと微調整が難しいことが問題視されている。また、金型から抜くときに微細構造体が破壊する問題点も抱えているため、作製方法の改善が求められていた。本研究では、鋳型を用いることなく微細な構造体を作製可能な方法の開発を目指して、レーザー光の干渉と光重合反応を組み合わせた、金型やフォトマスクを必要としない直接描画型の微細構造体の作製手法の開発を目標としている。このような作製手法の確立を目指して、405 nm半導体レーザーによる4光束・干渉光学系を開発し、その光を基材と反応溶液の界面に照射した。光学系はシャッターを用いて、1光束から4光束までの光を選択的に基材と反応溶液の界面に照射できるようにした。このような新規開発した装置を用いて、基材の表面に微細な構造体を形成することを試みた。反応溶液には、アクリル系のモノマーと光ラジカル開始剤を混合させたものを採用した。その結果、2光束を干渉させた場合は縞状の構造体を、また3光束もしくは4光束を干渉させた場合はドットアレイ状の構造体を形成することができた。構造形成の際、反応液に含まれる開始剤濃度を高くするほど、周期構造体を容易に形成できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金型を用いることなく微細構造体を作製可能な手法の開発を目指して、本研究ではレーザー光を用いた4光束・干渉光学系を新規に構築し、構造体の形成を試みた。光源には安価で汎用性が高い波長405nmの半導体レーザーを採用した。4光束・光学系では、1つのレーザー光を4つに分岐し、基材表面でそれぞれの光を重ね合わせることでレーザー光を干渉させた。新規開発した装置は、1光束から4光束のレーザー光を選択的に反応溶液に照射することができる。2光束を干渉させた場合には縞状の光パターンを、また3光束もしくは4光束を干渉させた場合にはドットアレイ状の光パターンを形成することができる。反応溶液には多官能のアクリル系モノマーに、光ラジカル開始剤(2-イソプロピルチオキサントン)を添加したものを用いて検討を行った。基材側から光を照射することで、反応溶液はシランカップリング剤で修飾されたガラス基材上で重合反応が進み構造体を形成した。詳細な検討を行った結果、構造形成には反応液に含まれる開始剤濃度の影響が大きいことが明らかとなった。開始剤濃度が飽和濃度に近い場合にのみ、数100nm周期の縞状・ドットアレイ状の構造体を形成させることができた。構造体の確認には、レーザー顕微鏡を用いた。また、本研究で得られた知見をフューズドシリカ基材に応用することで、内壁表面に機能性薄膜を作製することにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、反応溶液組成の最適化を図ることで、光の干渉を利用した周期構造体の制御因子を探る。また、周期構造体のゲル化検討も行うことで、多様な微細構造を作製できないか検討を行う。ゲル化検討については、安価で汎用性がある波長405 nmの半導体レーザーを用いて反応溶液の組成検討を行う。次にマッハツェンダ型の干渉光学系を用いて、縞状周期構造体で構造体の周期の縮小を図り、数ミクロンメートル周期の構造体の形成が可能な条件を検討する。さらに本研究で構築した光学系を用いて、数百ナノメートル周期までサイズダウンできるかについても検討を行う。また、これらの知見を活かして、フューズドシリカ内壁へ表面被覆方法が転用できないかについても検討を行う。フェーズドシリカを内壁とするキャピラリーは分析用途で多用されているが、表面被覆によりゼータ電位の制御が求められている。本研究で得られた知見が、ゼータ電位の制御に活かせないかについても引き続き検討を行っていくとともに、分析用途に活用できないか検討を行う。本検討で得られた知見については、学会発表等を通して広く公表するとともに、国際論文誌等に詳細を積極的に報告していく予定である。
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