2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17494
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鹿又 健作 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 助教 (60771243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 室温原子層堆積 / 多重内部反射型赤外吸収分光 / 加湿アルゴンプラズマ / X線光電子分光 / タンパク質 / 生体模擬材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究において、生体模擬材料としてポリエステル、脂質二分子膜、フェリチンを検討し、生体模擬材料表面での有機金属プリカーサーの吸着と酸化反応過程のその場観察を行うために、評価システムの整備を行った。本年度の研究において、生体模擬材料の候補であるメタクリル酸メチルをSiプリズム基板上にスピンコートを用いて塗布し、原料分子の吸着と酸化過程を前述のその場観察評価システムを用いて評価した。このとき原料ガスにトリスジメチルアミノシラン、酸化ガスに加湿アルゴンプラズマを使用した。赤外吸収のピークよりメタクリル酸メチル由来の炭化水素の構造変化、原料であるトリスジメチルアミノシラン分子由来のシリコン-水素の吸着と脱離が観察され、メタクリル酸メチル表面上での原料分子の吸着と酸化過程を評価できたと考えている。今後、スチレン、ポリヒドロキシスチレン。トリメチルシロキシシリルスチレン、ポリエステル、脂質二分子膜、フェリチンについても同様に原料分子の吸着と酸化過程を評価していきたいと考えている。また、本年度の研究では表面のその場観察と平行して、大気圧プラズマ酸化源として、誘電体バリア放電型のプラズマ源を試作し、加湿アルゴンガスを導入し、電圧を印加することで、大気圧プラズマを生成した。この大気圧プラズマ中でポリエステル粒子を処理することで、ポリエステル粒子の水に対する分散性が処理前と比較して向上した。これはポリエステル粒子の表面が酸化し、親水性が発現したと考えられ、この結果より、試作した大気圧プラズマ酸化源は、生体模擬材料として検討したポリエステルに対して、酸化ガスとして適用できる可能性が示唆された。今後、前述のその場観察装置に大気圧プラズマ酸化源を組み込み、大気圧下での生体模擬材料上での原料分子の吸着と酸化過程を評価していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究において、メタクリル酸メチル、スチレン、ポリヒドロキシスチレン、トリメチルシロキシシリルスチレンをアルミニウムの基板上にスピンコートを用いて塗布し、アニールを行い、膜を形成した。この生体模擬材料の膜上に本研究の室温原子層堆積を用いて酸化シリコンを堆積し、上記にあげる生体模擬材料の違いによって、酸化シリコンの製膜に差異が見られるか検討を行った。このとき原料ガスにトリスジメチルアミノシラン、酸化ガスに加湿アルゴンプラズマを使用した。室温原子層堆積のサイクル数を5、10、30、50と変化させ、X線光電子分光法を用いて生体模擬材料の膜上に製膜した酸化シリコンのSi2pのピーク強度を測定した。この結果より、上記の生体模擬材料の違いによってSi2pのピーク強度が異なっていることを見出している。このことから生体模擬材料の表面状態の違いによって有機金属プリカーサーであるトリスジメチルアミノシランの吸着と酸化の状態が異なることが推測された。本年度の研究において、メタクリル酸メチルをSiプリズム基板上にスピンコートを用いて塗布し、原料分子の吸着と酸化過程を多重内部反射型赤外吸収分光を用いて、その場観察を行った。このとき原料ガスにトリスジメチルアミノシラン、酸化ガスに加湿アルゴンプラズマを用いた。この結果より、メタクリル酸メチル表面上での原料分子の吸着と酸化過程を評価できたと考えている。また、メタクリル酸メチル表面上での原料分子の吸着と酸化過程の反応モデルを推測した。この成果は2017年8月に行われた第37回表面科学学術講演大会において研究発表を行っている。今後、スチレン、ポリヒドロキシスチレン、トリメチルシロキシシリルスチレンについても同様に原料分子の吸着と酸化過程を評価していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)生体模擬材料表面上での有機金属ガスの吸着・酸化機構の評価 生体模擬材料表面にTiO2のプリカーサーであるテトラキスジメチルアミノチタニウムとFe2O3のプリカーサーであるジイソプロピルプロピオンアミジネートアイロンを表面吸着させ、多重内部反射型赤外吸収分光を活用し、表面被覆率を計測する。有機金属プリカーサーは、酸化物上ではラングミュア吸着機構をとるが、生体模擬材料表面上での過程がよく分かっていないのが現状である。ここでは、被覆率と照射量の関係から飽和吸着かどうかを判断し、反応速度定数を抽出し、これをもとにALDのプロセス条件を設定する。 (2)微粒子ALD用大気圧プラズマの基礎試験 微粒子用のALD装置において、製膜雰囲気が大気圧であることから、使用するプラズマ源も大気圧とする必要がある。このため、誘電体バリア放電型の大気圧プラズマ源を活用し、本研究において要となる加湿アルゴンプラズマガスを大気圧下において発生させ、微粒子の表面の酸化特性を上述のその場観察装置で評価する。 (3)微粒子原子層堆積装置の試作 微粒子型ALD装置を構築し、タンパク質微粒子上においてTiO2とFe2O3の膜厚を原子層レベルで制御した微粒子の自在粒径制御に挑戦する。また、粒径とサイクル数の関係から表皮膜厚が制御できるかを明らかにする、さらに、残留N、Cの濃度を評価し、不純物低減のためのプロセス調整を行う。
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