2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17499
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
田中 あや 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究主任 (80564278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経細胞 / ハイドロゲル / 弾性率 / 神経突起形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞培養基板としてハイドロゲルを用い、その力学的特性を可逆的かつ空間的に制御することによって、神経回路形成における細胞外環境の力学的役割を解明することを目的としている。本年度は、以下の2つの課題に取り組んだ。 1、ハイドロゲル基板の弾性率が神経細胞の突起形成に及ぼす影響の検証:脳組織の弾性率を模倣した基板に対して、より高弾性率の基板上において神経細胞の突起形成が抑制されることを明らかにした。このような突起形成の抑制が起こる弾性率の閾値が1 kPa程度であることが示唆された。蛍光顕微鏡による観察により、高弾性率の基板上に接着した神経細胞の辺縁に網状のF-actinが高密度に形成されていることがわかった。F-actin骨格形成の阻害剤を用いた検討によって、細胞辺縁の高密度なF-actin構造が神経突起形成を阻害していることを明らかにした。また、突起形成後も継続して細胞培養を行った結果、培養3日後以降で、脳組織を模倣した基板上では神経細胞の凝集が起こり、高弾性率の基板上では細胞凝集は抑制されることが明らかになった。この結果は、基板弾性率に応じて、接着関連タンパク質の発現が大きく異なることが示唆される。 2、同一基板上で弾性率分布を有するハイドロゲル基板の作製:任意のパターンでフォトマスクを作製し、ハイドロゲル前駆体の架橋密度および反応時間を制御することで、脳組織と類似した弾性率及び、より高弾性率の領域を同一基板上に形成させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、光異性化分子を導入したハイドロゲル基板を作製し、その基板上で神経細胞の培養を行う予定だった。しかしながら、予備検討として光異性化分子が未導入のハイドロゲル基板で神経細胞を培養した結果、基板の弾性率に応じた細胞接着形態の変化、および、高弾性率基板上での神経突起形成の抑制など、これまで詳細な検討がなされていない現象が観察された。この結果を受けて、当初の予定を変更して、光異性化分子を導入したハイドロゲル基板の検討に取り組む前に、基板の弾性率と神経細胞の突起形成の相関性に着目した研究を行うこととした。そのため、基板の弾性率を可逆的に制御可能なハイドロゲルの作製に関しては進捗が遅れている。一方で、本年度で実施した、基板の弾性率と神経突起形成の相関性の成果は、次年度の計画に必要な基礎検討となったため、当初の予定より順調な進捗状況である。これらを総合して、計画全体としてはおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の計画として当初予定していた、光異性化分子を導入したハイドロゲル基板の検討を行う。本年度で得られた、基板の弾性率と神経突起形成の知見を基に、光照射によって基板の弾性率が数百Paから数kPaへと可逆的に変化するように光異性化分子の導入量を調整する。
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