2016 Fiscal Year Research-status Report
窒化ガリウム中ランタノイドによる高性能な単一光子源・量子ビットの実現
Project/Area Number |
16K17507
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 真一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員(定常) (40446414)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 窒化ガリウム / ランタノイド元素 / 単一光子発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、窒化ガリウム(GaN)中の単一ランタノイド元素の単一光子発生を観測するため、試料作製条件の最適化に取り組んだ。単一光子発生を観測するためには、ターゲットとなる発光中心以外の余分な発光を極力抑える必要があるため、基板の選定がまず重要となる。複数種類のGaN基板を調べた結果、GaN基板上にエピ成長した非ドープGaNがもっとも余分な発光が少なく適していることがわかった。次に、プラセオジム(Pr)およびユーロピウム(Eu)をイオン注入した非ドープGaNにさまざまな熱処理条件を与え、発光強度が最大になる熱処理条件を見出した。また、熱処理後の試料表面は、薄い酸化膜が形成されていると共に不純物などに起因する不要な発光源が付着しているため、王水・フッ酸による酸洗浄と有機洗浄が必要であることも明らかになった。注入量と発光強度の関係性から、1E12 cm-2より少ない注入量であれば、共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)によって単一ランタノイド元素からの発光が観測できることが示唆された。 高温イオン注入の有効性についても合わせて調べた。イオン注入時の温度を800~1100℃の範囲で変化させ、Prイオン注入直後の発光強度を調べたところ、1000℃までは発光強度が増大したが、それ以上の温度では表面荒れが発生し発光強度が劇的に低下した。さらに、高温イオン注入後の試料を1100℃で熱処理したところ、室温でイオン注入した試料がもっとも発光強度が高くなるという結果を得た。以上のことから、高温でのイオン注入は発光強度の低下をもたらす照射欠陥の減少に寄与している可能性は高いが、それ以上に表面荒れに起因するGaNの結晶性の劣化の影響が大きく、発光強度の改善には寄与しないと結論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最適なGaN基板および熱処理条件を見出すことはできたが、共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)によるランタノイド元素からの単一光子発生を観測するには至っていないため。CLSM測定における入射レーザーの波長や強度、測定時間などの最適化を行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
低注入量(1E12 cm-2以下)の試料のCLSM測定を進め、最適条件の探索を引き続き行う。最適な励起光波長を見出すため、フォトルミネッセンス励起(PLE)測定を行う。また、異なるワイドギャップ半導体材料を基板に用いることも検討する。比較のために、過去にPrからの単一光子発生の観測が報告されているYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)での実験も行う。
|
Causes of Carryover |
共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)のセッティングに必要な対物レンズや光学部品の一部については、すでに保有しているものでまかなうことができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
フォトルミネッセンス励起(PLE)測定を行い、最適な励起光波長を調べるために、文科省ナノテクプラットフォームを利用することを予定しており、そのための費用に使用する。
|