2016 Fiscal Year Research-status Report
量子もつれ光子対を利用した光計測技術の古典光学的実現
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16K17524
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 和久 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (80772574)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 回折限界 / 量子もつれ光子対 / 集光ビームスポット / 時間反転法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「量子もつれ光子対を利用した光計測技術の古典光学的実現」の一つとして、「回折限界を超える集光ビームスポット」の古典光学的実現の実験を行った。 光ビームを集光すると、ビームスポットにおける強度分布は波長に比例する有限の幅を持つ。この制限を回折限界という。位置-波数もつれ光子対を用いると、回折限界を超える小さい領域に2光子検出分布を集中させることができる。この性質はすでに実験的に実現されている。一方、量子もつれ光子対を用いた光学系の時間反転系を用いると、元の系(順方向系)が示す2光子検出分布と同じ強度検出分布を古典光学的に実現することができる。この手法を我々は「時間反転法」と呼ぶ。時間反転法はこれまでに時間-周波数もつれ光子対を用いた光学系には適用されてきたが、それ以外の自由度の量子もつれ光子対に対して適用した例はなかった。本研究では回折限界を超える2光子集光系に時間反転法を適用し、順方向系が示す小さいビームスポットの検出パターンを古典光学的に再現する実験を行った。そして理論が予想するとおり、順方向系が示す回折限界を超えるビームスポットおよび焦点深度を、古典光学的に再現することができた。これは時間-周波数以外の自由度である位置-波数の自由度の量子もつれ光子対に対して時間反転法を適用した初めての実験である。 本実験の初期の結果は、第6回QUATUO研究会にてポスター発表、および日本物理学会第72回年次大会にて口頭発表した。 なお、研究実施計画では本年度は「収差消去」の実験を行う予定となっており、空間位相変調器を購入予定であった。しかし、実験系の新規立ち上げに際し細かい備品等を購入する必要があったため、高額である空間位相変調器の購入を断念した。そのため、本年度は空間位相変調器の必要のない「回折限界を超える集光ビームスポット」の実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画提出時に想定していた3つの実験のうち1つを、3年間中の1年目で実施することができた。本実験の内容は投稿に向けて現在論文執筆中であり、順調にいけば6月頃に投稿できる見込みである。また国際会議での発表を夏頃に予定している。それらの研究発表作業と並行して次の実験準備に取り掛かれば、概ね順調なペースで研究が進行していると判断できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った「回折限界を超える集光ビームスポット」の古典光学的実現は、光イメージングにおける分解能向上を見越した基礎実験であった。しかし研究を進めていく中で、この手法での分解能向上が達成できる条件は非常に限られていることがわかった。それだけでなく、量子もつれ光子対を用いた順方向系においても、分解能向上が達成できる条件は変わらないことがわかった。そのため、この手法を光イメージングに適用する応用実験を行う意味は小さいのではないかと考えるようになった。 しかし一方で、本研究の時間反転法の考え方を利用すれば、古典光/量子光に限らず光イメージングにおける分解能の上限を理論的に導出できるのではないかと考えている。そこで今後は、後者の理論的考察を行っていく予定である。
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Research Products
(2 results)