2016 Fiscal Year Research-status Report
生体試料をターゲットとした真空紫外レーザーによる時間分解光電子分光法の開拓
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16K17528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 俊輔 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90431874)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 時間分解光電子分光 / 真空紫外 / フィラメンテーション / 深紫外 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィラメンテーション現象を利用して、生体試料を励起するための深紫外超短パルス光源の開発を行った。フィラメンテーションガスセルの圧力およびフィラメント長の最適化により、フィラメント中でのパルスの自己圧縮現象を世界で初めて深紫外域において実現し、深紫外超短パルスをガスセルから直接得ることに成功した。得られた15fsというパルス幅は、これまで実現されたサブmJ深紫外パルスの中で最も短いものである。 真空紫外レーザーを用いた時間分解光電子分光により、二酸化炭素の真空紫外域光反応ダイナミクスの解明を行った。実験の結果、非常に広帯域な時間分解光電子スペクトルがどの遅延時間においても観測された。一方、ミュンヘン工科大学との共同研究により、ab initio計算に基づくCO2の励起状態ポテンシャルエネルギー曲面が得られた。それを元にした量子ダイナミクス計算により、励起されたリドベルグ状態(主量子数n = 9~10)から、より低いnのリドベルグ状態への電子緩和が非常に高速に(15~65 fs)起きることが示唆された。実験で観測された広帯域なスペクトルは、この電子緩和の結果であると解釈できる。電子緩和に引き続いて、一部の励起分子は200fs程度の時定数で三重項状態へと項間交差し、また更にサブps程度の時定数で解離が起きることも分かった。同反応についてはこれまで実時間観測の報告例は存在せず、詳細な反応機構が本研究により初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
深紫外域励起光源の開発に関しては、フィラメント中でのパルスの自己圧縮現象を世界で初めて深紫外域において実現し、想定より大幅に高強度の深紫外超短パルスを得ることができた。また、前述の二酸化炭素の例に加えて、数多くの有機分子試料に対して真空紫外レーザーを用いた時間分解光電子分光による反応ダイナミクスの解明を行った。以上のことから、予想以上の進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
導波路型の生体試料導入器を開発し、試料濃度の大幅な向上を実現する。この資料導入器を真空紫外レーザーによる時間分解光電子分光装置に組み込み、DNA核酸塩基の反応物生成過程の観測を行う。
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Causes of Carryover |
多くの有機分子試料について真空紫外レーザーを用いた時間分解光電子分光測定を行ったため、導波路型の生体試料導入器の開発・試験に供する同分光装置のマシンタイムに限りがあった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度に、導波路型の生体試料導入器の開発・試験を行う予定である。
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Research Products
(10 results)