2017 Fiscal Year Research-status Report
生体試料をターゲットとした真空紫外レーザーによる時間分解光電子分光法の開拓
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16K17528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 俊輔 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90431874)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 時間分解光電子分光 / ニトロメタン |
Outline of Annual Research Achievements |
真空紫外レーザーを用いた時間分解光電子分光により、ニトロメタン(CH3NO2)の解離反応ダイナミクスの解明を行った。ππ*励起後、ニトロメタンは超高速の解離反応を起こす(CH3NO2 + hν → CH3 + NO2)ことが知られている。ニトロメタンの電子状態と、解離生成物NO2の電子状態とが相関していることが理論的に予測されているため、NO2の電子状態分布が測定できれば解離反応のメカニズムが議論できる。実験の結果、ニトロメタンのS3→S2→S1の内部転換がまず24fs以内で起こることが分かった。NO2の電子状態分布については、NO2(A) とNO2(X)とが同程度生成していた。解離反応は主としてS1ポテンシャル曲面上で、<50fsの時定数で進行することが分かった。 真空紫外レーザーを用いた時間分解光電子分光により、フランの超高速無輻射緩和ダイナミクスの解明を行った。フランもDNA核酸塩基も同じくヘテロ環状分子であり、反応に関与する円錐交差の構造(PuckeringとRing-opening)にも共通性がある。実験の結果、ππ*励起後90fs経ってからpuckering円錐交差に到達することが分かった。ヴュルツブルク大学との共同研究により、puckering円錐交差を通過する際の時間分解光電子スペクトルがシミュレーションによりほぼ再現された。puckering円錐交差を通過後、90%以上の分子は元のフランの電子基底状態へと150ないし260fsの時定数で内部転換する一方、残りの約10%の分子は後続反応により異性化することも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のニトロメタンの例に加えて、ヘテロ環状分子(フラン)の円錐交差ダイナミクスの解明も行った(投稿準備中)。フランもDNA核酸塩基も同じくヘテロ環状分子であり、反応に関与する円錐交差の構造にも共通性がある。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現有の試料導入用ノズルに加熱機構を設けることで生体試料の導入を可能にする。DNA核酸塩基の反応物生成過程の観測を行う。
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Causes of Carryover |
現有の試料導入用ノズルに加熱機構を設けることで生体試料の導入を行う目途がついたため。代わりに、測定試料の購入に充てる計画である。
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