2016 Fiscal Year Research-status Report
光学的波長変換によるSi系カメラを用いた高解像THzリアルタイムイメージング開発
Project/Area Number |
16K17534
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小山 美緒 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 特別研究員 (90757147)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機結晶 / 非線形光学係数 / 結晶評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機非線形結晶DAST内での差周波発生および第二高調波発生により、テラヘルツ波の像情報をシリコン系カメラで観測可能な可視域光にまで転写することで、高解像度・高感度リアルタイムテラヘルツイメージングの開発・構築を行うことを目的としている。THz波から可視域光への変換は、非位相整合状態で起こっているため変換効率が10の-6乗と小さい。シリコン系カメラで観測可能な可視域光の出力を得るための手段の一つとして、結晶に入射するビームサイズを大きくすることが挙げられる。この場合、広範囲にわたって高品質で損傷閾値が高いDASTを用いる必要がある。今年度では、DASTの面内品質を簡便・迅速に計測する装置を開発した。 有機結晶・新規材料は無機結晶と比べると安定した結晶性を得るのが難しく、その品質は結晶成長の方法や僅かな環境の変化により様々であり、さらに一つの結晶の中にも結晶性のばらつきを含む場合がある。目的はDASTの結晶性の面内分布を可視化し、優れた結晶性を持つDAST結晶を迅速に判別することである。計測方法は非位相整合状態の第二高調波発生を利用したウェッジ法を採用した。これは、DASTを始めとする有機結晶がAs grownの状態でウェッジ角に相当する微小勾配がついているためである。これによりサンプル加工にかかる時間コストが大幅に低減し、迅速で簡便な計測が可能になった。 この装置を開発したことで、DASTの結晶性面内分布が可視化され、優れた結晶個体を迅速に選び出すのみならず、基本波の偏光を変えることで同一結晶での異なるテンソル成分を計測し、高精度の非線形係数の比を算出すること、参照結晶を用いてDAST結晶の非線形係数を評価することが可能になった。この成果はレーザー学会、応用物理学会にて発表されており、また学術雑誌に成果をまとめ公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像度テラヘルツイメージングに用いる有機非線形結晶DAST内での高効率な波長変換を行うため、優れた結晶性を持つDAST結晶を判別することを目的とした。一般的に有機結晶は無機結晶のような高い品質を安定に得ることが難しいため、優れた結晶を迅速かつ簡便に選び出すための装置を開発した。 非線形係数の計測方法として代表的なメーカーフリンジ法では、サンプルを精密な平行平板に加工する必要がある。有機結晶においては機械的強度が低い場合が多く、加工中に結晶の破損が起こりやすいことから、サンプル加工にかかる時間的コストが問題となっていた。また、第二高調波の出力が結晶の厚みに依存することから、加工したサンプルの形状誤差が計測に影響することが問題となっていた。 非位相整合状態でのSHGを利用したウェッジ法を計測方法として採用し、サンプル加工を不要にしたことで、時間的コストを大幅に削減することに成功した。さらに、基本波の偏光を変えることによって同一結晶内での異なるテンソル成分を計測し、サンプルの個体差に影響されない高精度な非線形係数の比の算出を実現した。加えて、リチウムナイオベート結晶といった、安定して生産される無機結晶を参照結晶として用いることで、DAST結晶の非線形係数の相対評価が可能になった。これはTHz波検出における波長変換効率の理論的な考察に貢献できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本装置はウェッジ法を計測方法として採用していることから、結晶面内のSHG出力はsin二乗の振動として現れ、その振動間隔は計測するテンソル成分の基本波とSH光の屈折率差に依存する。この振動の振幅値を計測することで結晶の非線形係数を算出しているが、As grownのDAST結晶がもつウェッジ角が大きい個体では縞の間隔が200マイクロメートルより狭くなり、正確な振幅値の計測が困難となる。同一結晶内で異なるテンソル成分を計測する場合は、その成分により適切な角度が異なるため、両者の振幅値を正確に計測できる角度はある一定の範囲に限られる。また、SH出力の暗線部分の結晶性は可視化されず、周囲の出力分布から予測している状況である。これは基本波として単一周波数の光源を使用しているため、SH出力が完全に打ち消し合う箇所が生じるからである。 そこで、光源として波長チューニングレーザーを用いて、各結晶位置に対して波長を掃引しながら計測する手法を考案した。この手法では結晶のウェッジ角に依存せずに、SHG出力の振幅値を結晶面上で隙間なく計測することができる。サンプル形状はウェッジ付きのみならず平行平板などあらゆる形状が測定可能になり、サンプル加工なしに計測が可能になる。 光源はCWチューナブルレーザーを利用する。これまでのパルス光源に対してピーク出力が低いため、エルビウム添加ファイバー増幅器を用いて光源出力を増幅し、装置の検出閾値を超える出力を得る。またロックインアンプとの同期を行うために、CW光を変調する素子を用いる。
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Causes of Carryover |
高解像度テラヘルツイメージングに用いる有機非線形結晶DAST内での高効率な波長変換を行う際、高い変換効率を得る必要がある。その方法の一つとして、結晶への入射ビーム経を広げ大きい相互作用面積を得る場合には、結晶の損傷を避けるため、広い面積において結晶性の高いDAST結晶を用いる必要がある。これに適したDAST結晶を迅速かつ簡便に判別するため、非位相整合状態によるSHGを利用した面内結晶性検査装置の開発を行った。このため購入予定品目に変更が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、光源を波長チューニングレーザーに置き換えた面内結晶性の計測を行う予定であり、高額購入品としては、波長チューニングCWレーザー・光源に変調をかける光学素子・光源を高出力化するためのエルビウム添加シングルモード偏波保持ファイバー増幅器等を新たに購入する予定である。その他に消耗品として光学部品、ファイバー部品、計測するサンプル結晶、旅費、学会参加費や論文掲載費としての使用を計画している。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] High-resolution, THz-wave real-time imaging with Si-camera based on nonlinear optical up-conversion.2016
Author(s)
Mio Koyama, Kouji Nawata, Yu Tokizane, Yuma Takida, Zhengli Han, Takashi Notake, Shin'ichiro Hayashi,Hiroaki Minamide
Organizer
Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEO2016)
Place of Presentation
San Jose, California, USA
Year and Date
2016-06-05 – 2016-06-10
Int'l Joint Research