2017 Fiscal Year Research-status Report
中性子回折による水素ハイドレートの高圧結晶構造の解明と横断的科学分野への応用
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16K17547
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
町田 真一 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (30554373)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水素ハイドレート / 中性子回折 / 結晶構造解析 / 高圧 / ダイヤモンドアンビルセル |
Outline of Annual Research Achievements |
水素ハイドレーとは、水分子が水素結合によりフレームワーク構造を作り、その中に水素分子を内包することで形成される固体結晶である。氷惑星やその衛星中に水素ハイドレートが偏在し、水素分子のリザーバとして、天体の形成や進化に重要な影響を及ぼしている可能性がある。しかしながら、従来の研究手法では結晶構造内での水素の情報を得ることが難しかったため、水素ハイドレートの詳細な構造の解明など多くの未解決問題が残されている。本研究では、水素原子を直接測定することが可能な中性子回折実験の手法を用い、水素ハイドレートの詳細な高圧構造を決定して、ハイドレート物性を解明することを目的として研究を行っている。 本年度は、水素ハイドレートの高圧実験を行うために開発を行った、高圧発生装置・ダイヤモンドアンビルセル(DAC)の高度化を行うことを主な目標として研究を行った。研究の成果として、DAC装置により45万気圧の高圧発生に成功した。この圧力は本装置において想定していた最大圧力に近く、ほぼ理想通りにDACの開発が成功したことが示された。また平成28年度の研究で中性子回折実験において、中性子ビームをダイヤモンドを通して入射するとそのプロファイルが変化することが明らかとなった。本年度はこのプロファイルの変化を避けるため、中性子ビームがダイヤモンドを通らない装置の開発を行い、その結果として解析可能な中性子回折パターンを得ることに成功した。 さらに、開発を行ったDAC装置中で、水素ハイドレート試料の作成に成功し、高圧下での顕微鏡観察を行うことができた。これらの研究・開発により、水素ハイドレート試料の高圧中性子回折パターンを得ることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究において、中性子ビームをダイヤモンドアンビルセル(DAC)のアンビルに通すことで、入射ビームの強度プロファイルが変化することが明らかとなった。このため、中性子回折パターンによる構造解析を行うためには、強度プロファイルの補正方法を確立するか、あるいは入射ビームが変化しないような方法を開発することが必要となった。このことは、研究を進めていく上で新たに生じた課題であり、平成29年度にこの課題に取り組んだため、当初の予定より研究がやや遅れてしまった。 一方で、本年の研究・開発によりDACによる中性子回折実験を行うための準備は整い、またDACによる水素ハイドレート試料の生成に成功した。このことから、水素ハイドレートの高圧中性子回折実験の実施の足掛かりを築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、高度化を行ったダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用い、J-PARC・MLFの高圧中性子ビームラインPLANETにおいて、水素ハイドレートの高圧実験を行う計画である。得られた回折パターンについてリートベルト解析を行い、水素ハイドレートの詳細な構造の決定を行う。また、中性子回折実験と並行してRaman分光実験を行い、水素分子と水分子との振動状態を明らかにしていく。得られた成果により、結晶構造中の氷・水素の相互作用についての知見を得る。
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Research Products
(3 results)