2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of free-energy calculation method based on the first-principles electronic-structure calculations and its application
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16K17551
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
洗平 昌晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20537427)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計算物質科学 / 自由エネルギー計算 / 電子状態計算 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
固液界面に適した古典力場を第一原理電子状態計算手法から構築し,自由エネルギー解析手法(マルチカノニカルモンテカルロ法)による網羅的なガス発生シミュレーションを実施した.ただし,リアルなモデルでは現実的な解析が容易でないため,界面を模擬したモデルに対してシミュレーションを実行した.ある温度で実現される統計集団を模擬するカノニカルシミュレーションとは違い,マルチカノニカル(MUCA)シミュレーションは指定した温度領域内をランダムに探索する手法である.すなわち,高温の領域を経て常温に戻ってきた構造は通常のシミュレーション時間では得ることのできない構造を生じ得る.したがって,MUCAシミュレーションはある温度での構造を網羅的に探索することのできる手法であり,一般に平衡状態に達する時間(緩和時間)の長い液体の系に対して非常にパワフルな解析手法である.エチレンカーボネート(EC)50%,ジメチルカーボネート(DMC)50%の電解液から成る系に対してMUCAシミュレーションを実施したところ,ガス分子としてEC由来のHCCH(アセチレン)が1個,H2CCH2(エチレン)が1個,CH2Oが2個,DMC由来のCH4が2個,ECとDMC由来のCO2が2個,COが9個確認できた.さらにCH2OHの発生が確認できた.CH2OHはEC由来と考えられているが,従来想定されている分解経路からは現れない分子である.今後,詳細な分解経路を明らかにしていく予定であるが,この計算結果は本研究課題で開発した計算手法のパワフルさを端的に示していると考えられる. 本年度に実施した電解液は現在の主たる電池に利用されているものである.また,電解液の分解によるガス発生はその性能劣化に関連した現象である.したがって,「実験と理論の橋渡し役」や「産業技術に対する貢献」を目指す本研究課題の応用例の一つとして非常に意義深いものである.
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