2016 Fiscal Year Research-status Report
一般化岩澤主予想とp-進局所Langlands対応
Project/Area Number |
16K17556
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中村 健太郎 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90595993)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ガロア表現 / 岩澤理論 / p進局所ラングランズ対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩澤主予想の局所版である局所イプシロン予想について研究した. 後者の予想はBloch-加藤exponentialと局所イプシロン因子のp進補完性に関する予想である. Bloch-加藤exponentialと局所イプシロン因子はドラーム表現に対して定まる数論的に重要な対象であるが, これらを適切に組み合わせることでドラーム表現のガロアコホモロジーに標準的な基底を定義することができる. 局所イプシロン予想とは, ドラーム表現のみに定義されるこの基底を補間する「局所イプシロン同型」と呼ばれる基底が全てのp進ガロア表現の族に対して存在することを主張する予想である.
申請者は以前の研究で, Colmezの乗法的合成積を用いた局所イプシロン同型の構成に関する予想を立てていたが, この予想を多くの場合に証明することができた. 具体的には, ガロア表現の変形理論によって得られる普遍的なガロア表現に関してクリスタリン表現が稠密であるという仮定の下で, 普遍的なガロア表現のガロアコホモロジーの基底をColmezの乗法的合成積を用いて構成することができた. さらに, この基底がクリスタリン表現に対してBloch-加藤exponentialなどを用いて定義される標準的な基底を補間するものであることも証明できた. クリスタリン表現はガロア表現の変形空間の中で稠密であると期待されており, この期待を信じれば, 我々の構成した基底の存在とクリスタリン表現での補間性により, 存在が予想される局所イプシロン同型は我々が構成したもの以外にはあり得ないという結論が得られる. また, Colmezの乗法的合成積という関手的に振る舞いのよい演算を用いて局所イプシロン同型を構成したことの副産物として, 2つのガロア表現のテンソル積の局所イプシロン同型をそれぞれの局所イプシロン同型の積を用いて記述する積公式を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Colmezの乗法的合成積というp進局所ラングランズ対応の研究で現れた演算が, 局所イプシロン予想という一見異なる問題においても本質的に重要な演算であることが明らかにされた. また, この副産物として得られた局所イプシロン同型の積公式は, 通常の局所因子に対しては一般には成り立たないものであり, 局所イプシロン同型に関して従来知られていなかった興味深い公式であると思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究集会やセミナーでさらに情報収集を進めるとともに.専門家との研究打ち合わせを行う.
|
Causes of Carryover |
学内業務および学内行事のため, 当初参加予定であったいくつかの学会, セミナーへの参加を取りやめたことが次年度使用額が生じた主な理由と考えられる.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究集会への参加や専門家との研究打ち合わせのために使用する.
|