2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17567
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 拓也 名古屋大学, 高等研究院(多元), 特任助教 (50748803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 共形場理論 / 量子群 / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、中心電荷が正の有理レベルにおける2次元共形場理論と量子群との関係について研究を進めた。2次元共形場理論は、1984年のBelavine-Polyakov-Zamolodchikov(以下、BPZ)の論文によって、2次元場の量子論と無限次元のビラソロ代数の表現論を巧みに結びつけることにより、様々な臨界現象を記述するなど画期的な成功を収めたことに始まる。BPZが注目した、いわゆるミニマル模型では、中心電荷が有理数に値を取り、我々の研究もこの場合を対象にしている。ただし、PBZのミニマル模型は表現論的には、ビラソロ加群の準同型写像を定めるスクリーニング作用素のコホモロジーとして解釈できる(Felder複体)に対し、本研究では、スクリーニング作用素の核全体を考える、これは、A_1型の拡大W代数と呼ばれる。さらに、この拡大W代数は、格子頂点作用素代数の部分頂点作用素代数となっている。 従って、格子頂点作用素代数に対応する共形場理論の観点から、拡大W代数を捉えるのが見通しが良い。その為には、スクリーニングカレントと呼ばれる共形次元1を持つビラソロ主要場が重要な役割を果たす。このカレントのゼロモードは、先ほどのスクリーニング作用素に他ならない。共同研究の結果、このスクリーニングカレントは「超対称な場」であると解釈することにより、格子頂点作用素に付随する2次元共形場理論を、一つの超対称多重項と理解することが可能であることが分かってきた。現在、理論の詳細を検討するとともに、論文を準備中である。 また、スクリーニング作用素の成す代数は、1の冪根における量子群と密接な関係があることが知られており、その精密化については今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正の有理レベルにおける2次元共形場理論は、ビラソロ代数や拡大W代数などの対称性を持つが、この理論にどのように超対称性が現れるかは、非自明な問題である。本研究において、格子頂点作用素全体にある種の外部自己同型として、超対称な場が作用していることを認識できたことは、概念的に進展があったと考えている。その点に関して、研究計画としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、まず上記の成果を詳細を検討したう上で論文の形にまとめて行きたい。次に、1の冪根における量子群と正の有理レベルにおける2次元共形場理論の関係について、より精密な形で理解したいと考えている。また、これまでは主にA_1型で研究を進めてきたが、高ランクや高種数のリーマン面上での共形場理論への拡張を見据えて、理論を整備していくことが重要であると考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた予算額より、国内出張旅費等が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も、主に国内学会や研究打合せ等のための旅費として、繰越額を使用する予定である。
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