2016 Fiscal Year Research-status Report
テンソル圏における積分・フーリエ変換・指標の理論の研究
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16K17568
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 健一 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (70624302)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホップ代数 / テンソル圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、テンソル圏における『随伴代数』について研究を行った。これはテンソル圏とその中心との間のある随伴を用いて定義されるものであり、リュバシェンコ型の位相的量子場の理論の構成においても中心的な役割と持つものである。 随伴代数に関する研究成果の応用として、まず有限テンソル圏の中心のピボタル構造およびリボン構造の分類を行い、有限次元ホップ代数の量子ダブルのピボタル構造およびリボン構造の分類(Kauffman-Radford)を一般化するような結果が得られた(arXiv:1602.06534)。ピボタル構造を持つような有限テンソル圏では研究代表者がこれまで研究してきた『内部指標理論』を適用することができるが、このような意味でもピボタル構造の分類は重要である。また、有限テンソル圏の中心がいつリボン構造を持つかどうかを判定できるようになったことで、スフィリカルなフュージョン圏の中心はモジュラーテンソル圏となるという結果の『非半単純』な一般化も得られた。 次に、随伴代数に関する研究成果の応用として、有限テンソル圏における積分の理論を有限次元ホップ代数の積分の理論を一般化する形で構築した(arXiv:1702.02425)。この理論を用いることで、例えばLorenzによる随伴代数と積分を用いたカルタン行列の階数の公式などの、ホップ代数の表現論におけるいくつかの結果を有限テンソル圏へと一般化することに成功した。またKashina-Montgomery-Ngによって導入された有限次元ホップ代数のindicatorを有限テンソル圏へと一般化し、彼らの証明したindicatorの『ゲージ不変性』に対して概念的な説明を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、有限テンソル圏に対する積分とフーリエ変換の理論を基礎づけ、それを応用して有限次元ホップ代数に対して知られている結果を有限テンソル圏へと一般化することを目標としていた。研究実施以前に調べる予定だった問題も多くが解決できた。また、積分理論を用いて有限次元ホップ代数のindicatorを有限テンソル圏に対して一般化できるという予想外の結果も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、積分理論を用いて位相不変量や共形場理論への応用を探るとしていた。しかし、以前に研究代表者が発表した半単純とは限らないモジュラーテンソル圏の特徴づけに関係して、この分野での研究が急速に進んでおり、当初計画していた問題のいくつかは他の研究者によって解決されている。そこで、平成29年度は、組みひも構造やピボタル構造を持たないような一般的なテンソル圏における積分理論などを研究していき、ホップ代数の表現論などへの応用を目指す。
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Causes of Carryover |
国内で開催される国際研究集会に海外から研究者を招く予定があり、人件費・謝金として関連する予算を計上をしていたのだが、先方のご都合により参加されないこととなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は研究も大きく進んだため、その内容を国際会議等で積極的に発信することによって予算を使用したい。
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