2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17570
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳田 伸太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (50645471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 表現論 / 代数幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の11月末までは、主に頂点代数の幾何学的フォーミュレーションであるchiral algebraと代数曲線の付随するモジュライ問題との関係を研究した。具体的には 1. 頂点Poisson代数の変形量子化、2. 変形問題のJacobi複体とchiral Chevalley複体、3. boson-fermion対応のfactorization spaceによる理解、の3項目を研究した。1と2ではLie代数におけるChevalley複体のchiral代数類似をoperadの理論を応用して導入し、その応用を考えた。特にあるクラスの頂点Poisson代数の変形量子化の一意性を示した。3はchiral代数と同値であるfactorization spaceの枠組みを使って、古典的な頂点代数の同型であるboson-fermion対応の別証明を与えた。以上の内容を次のプレプリントにまとめた。1. Deformation quantization of vertex Poisson algebras, arXiv:1607.02068. 2. Jacobi complexes on the Ran space, arXiv:1608.07472. 3. Boson-fermion correspondence from factorization spaces, arXiv:1611.06100.
また関係分野のレビュー論文Factorization spaces and moduli spaces over curvesを執筆した。これはJosai Mathematical Monographsから出版された。
後半は主にTuraevのskein代数とHall代数の関係を研究している。Riemann面の基本群の表現に付随したGoldmann Lie代数の変形がTuraevのskein代数であり、種数が低い場合は代数曲線の連接層に付随したHall代数と代数同型であることが知られている。この現象をホモロジー的ミラー対称性の観点から理解することを目標とした研究を進めており、口頭発表を数回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の予定では、代数曲面に付随したモジュライ問題と頂点代数との関係の理解を目標にしていたが、今年度は代数曲線に関連した問題しか扱えなかった。この点では進捗度は低めであるが、1次元の場合はホモロジー的ミラー対称性や幾何学的Langlands対応といった、比較的明確に理解できる双対性の問題も関連することが分かり、当初の予定になかった研究トピックがいくつか見つかった。そのため進捗度はおおむね順調とした。 新しく見つかった研究トピックとしてTuraevのskein代数とHall代数との関係、skein代数と変形量子化の関係、differential graded algebraやderived algebraic geometryと頂点代数(層)との関係がある。これらについて2017年度に研究を進めたい。 また当初の予定である代数曲面と頂点代数についても、Hall代数とそのDrinfeld double、および導来圏の安定性条件との関係から研究を進展させる目途が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の5つの研究課題に取り組みたい。1. Turaevのskein代数とHall代数との関係をホモロジー的ミラー対称性の観点から研究する。2. Hall代数のDrinfeld doubleと2周期複体の圏のBridgeland安定性との関係を調べる。3. skein代数をRiemann面の基本群の群環の変形ととらえ、変形量子化およびHamiltonian reductionの変形問題と関係させて研究する。4. 代数曲面、特に標準因子が自明な曲面のchiral de Rham 複体の研究。 1.については既に研究を進めていて、特にトーラスのskein代数と楕円曲線のHall代数の双方を誘導するexact categoryを構成した。この圏上の圏同値であって楕円曲線の導来圏でのFourier変換に対応するものを構成中である。3.については種数0、正確にはアニュラスのskein代数と古典的Hall代数が同値であることを、K理論的Hall代数の枠組みで理解することが第一歩であると考えている。
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