2016 Fiscal Year Research-status Report
Dirichlet L-関数の解析的性質および素数分布
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16K17574
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宗野 惠樹 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10735989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 素数分布 / 篩法 / ゼータ関数 / リーマン予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の前半は、昨年度から研究していた素数および概素数の分布に関する研究を完成させた。双子素数予想やゴールドバッハ予想のような加法的整数論の問題に対する有力な道具として、「篩法」とよばれる手法が挙げられる。特に隣接する素数の差を問題にする場合はGPY(Goldston, Pintz, Yildirim)の篩という篩法が有効であることが知られていた。2013年、MaynardはこのGPYの篩を拡張することにより、隣接する素数の組で差が600以下のものが無限に存在することを示した。私の研究では、Maynardの篩を概素数と呼ばれる、2つの素数の積で表される整数の集合に適用し、隣接する概素数の差に関する新しい結果を証明した。特に、隣接するn個の概素数の組で、最小のものと最大のものの差が十分小さくなるものが無限に存在することを示した。これらの結果を論文にまとめ、専門誌に投稿した。 後半は、リーマンゼータ関数の零点の研究を行った。リーマンゼータ関数とはある範囲で簡単な級数で定義される関数であるが、素数分布と密接に関連していることが知られており、その解析的性質を解明することは整数論における重要な課題である。特に、実部が0と1の間での挙動が重要であり、この範囲における零点はすべて実部が1/2であると予想されている(リーマン予想)。この予想に対するアプローチの1つとして、実部が1/2である零点の割合を下から評価する方針が挙げられる。なかでも、mollifierとよばれる関数を用いた計算が非常に有力である。私の研究では、リーマンゼータ関数に対する新しいmollifierを考案し、それを含む積分の評価を行うことで、リーマンゼータ関数の零点のうち少なくとも41.05821%が実部が1/2であることを示した。また、単純零点の割合の評価についても一定の改善ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた素数分布の研究とL-関数(リーマンゼータ関数を含む)の解析的性質の研究の双方において一定の成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はしばらくリーマンゼータ関数をはじめとするL-関数の解析的性質の研究を続行する予定である。この分野の研究は現在急速に進展しており、関数論のみならず確率論、エルゴード理論などを応用した様々な新しい手法が開発されている。これらの手法を習得し、同時に自身の新しいアイデアを付け加えることで、ゼータ関数の零点分布などの古典的問題に対してこれまでにない優れた成果が挙げられるのではないかと期待できる。
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Causes of Carryover |
本年度は学内業務などの都合により予定よりも出張に行く回数が少なくなったため、そのぶん使用額が予定よりも下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、興味のある学会や研究集会になるべく多く参加することで旅費として使用する予定である。
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